ここ数十年で奇跡的な成長を遂げたセブン-イレブンは「金の食パン」「セブンカフェ」というヒット商品を生んだ。つねに顧客を引き付けるそのパワーはいったいどのような「習慣」から生まれてくるのだろうか。

「おいしい」の裏の意味とは?

2013年のヒット商品番付入りの候補の1つに「金の食パン」がある。セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド(PB)の高級版、「セブンゴールド」のシリーズとして、4月に発売され、1斤6枚入りが250円とメーカーのナショナルブランド(NB)商品より5割以上高い価格ながら、おいしさが支持され、4カ月で1500万食とNB商品の2倍を売り上げ、大ヒット中だ。普通の経営者なら、「販売促進に注力するように」と指示するところだが、鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)は発売早々、意外な指示を出した。「すぐにリニューアル版の開発に着手するように」。その理由をこう話す。

セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEO 鈴木敏文氏

「金の食パンは、際だっておいしい。ただ、おいしいものにはもう1つ裏の意味があって、それは“飽きる”ということです。おいしいものほど続けて食べれば飽きる。だから、飽きられる前により味をよくしたものを投入する。顧客は味が変わったことに気づかないかもしません。飽きずにおいしいと感じてもらえればそれでいいのです」

リニューアル版は発売半年後の10月1日に投入された。常に顧客の心理を読んで一歩先の手を打つ。それが顧客のロイヤルティ(忠実度)を高め、数字に表れる。主力セブン-イレブンの全店平均日販は約67万円と他の大手チェーンを12万円以上も上回る。どうすれば顧客から継続して支持を得られるのか。鈴木流の「売り続ける発想法」を、凡人が陥りがちな発想と比べながら見てみよう。