最近は企業に理不尽な要求を突きつけるモンスタークレーマーがよく話題になるが、忘れてはならないのはまずい対応が相手をクレーマー化させている場合が多々あることだ。

ある旅行予約サイトの運営会社に、60代の夫婦から「朝食を自室で食べられなかったから代金を全額返してほしい」という電話が入った。数人が対応したが、態度が強硬で埒が明かない。対応した者は「それくらいで全額返金を要求するのはクレーマーに違いない」と考えた。しかし谷氏が理由を詳しく尋ねたところ、事情があるとわかった。

「ご夫婦とも足が悪いので、旅館の予約の際に重視したのが部屋での食事でした。しかしサイト情報の間違いで朝食はレストランでのバイキング形式だったのです。『右手に杖を持ち、左手にトレーを持ってどう料理を取るんですか』と。実はこのお客様は当初それほどお怒りではなかったのですが、クレーマー扱いされたので激昂されてしまった」(クレーム・コンサルタント 谷 厚志氏)

「詳しくお聞かせください」と相手に飛び込み、事情を理解することがクレーマー化を防ぐ、と谷氏は力説する。

【答え&解説】クレームが入ったときの初動を間違えたために、生まれてしまうのがこのタイプで、「クレーマー」と呼ばれてしまう。AやBのように逃げるともっと追いかけてくる。「もう少し詳しく聞かせてください」と逃げずに突っ込む。そのうえでCのように言い出そう。

弁護士 間川 清
1978年生まれ。25歳で司法試験に合格し、ポート川越中央法律事務所設立。損害賠償事件、刑事被告人弁護など年間200件以上の弁護士業務を担当。被害者への謝罪・示談交渉、悪質クレーマーへの対応等を通して謝罪術を確立。著書は『うまい謝罪』など。
苦情・クレーム対応アドバイザー 関根眞一

1950年生まれ。西武百貨店にて全国3店舗のお客様相談室長および池袋本店お客様相談室を担当。在社中は1300件以上のクレーム・苦情を処理。2003年退社し、NPO事務局次長を経てメデュケーション代表取締役。著書は『となりのクレーマー』など。
クレーム・コンサルタント 谷 厚志
1969年生まれ。リクルートにてCS推進室を担当。2000本以上のクレーム対応を通して「クレーム客をロイヤルカスタマーに変える方法」を確立。現在は独立し、コンサルティング・講演などを行う。著書は『「怒るお客様」こそ、神様です!』など。
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