なぜハロウィンでコスプレするのか

現代の新しい強制は当然、消費にも影響を与えています。先日、若者たちとクライアント企業の人たちとの飲み会を行ったときのことです。私が飲み物をクライアントの人たちに確認しただけで、学生には聞かずに「とりあえずみんなビール!」と注文したところ、一人のビール嫌いの女の子から、「いまの学生に、確認もしないで全員ビール頼むと嫌われますよ」と叱られました。

ところが翌日、たまたま彼女のツイッターを見たら「オクトーバーフェストなう」「世界のビール飲み比べ中」とつぶやいているのです。私を攻撃するくらいビールが嫌いなくせに、オクトーバーフェストでは飲むのです。

ここに1つの回答があって、SNSでつながったさとり世代にとって、最上位にある価値観は「お友達」です。だから友達とオクトーバーフェストに行けば好きでないビールも飲むし、飲んでいる写真をインスタグラムにアップする。それを見た他の友達はお気に入りマークを押したりコメントをつけたりする流れができているのです。

ハロウィンが急激に盛り上がってきたのもこのためです。ハロウィンは一言で言えば、年に一度のコスプレイベント。それに参加するさとり世代の目的は、コスプレ写真を撮ってSNSにアップすることなのです。

ですから、若者向けの商品を考えるうえで大切なのは、お友達との関係の中で消費せざるをえない状況をつくることです。

たとえば、ツイッターでレッドブルを検索すると、多くの中学生から社会人くらいの人が「レッドブルなう」とつぶやいています。

SNS村社会において直接表現は嫌われます。特に自慢は最も嫌われる。私たちが言いがちな「忙しくて3日も寝てないよ」という徹夜自慢もだめです。ところがレッドブルのおしゃれな缶を載せ「レッドブルなう」とつぶやくと、エナジードリンクを飲むほど疲れているのだと間接的に表現できるし、見ているほうは自然に「頑張れよ」と言える気持ちになります。つまり、レッドブルがヒットしたのは、若者の間接表現ツールとしてハマったからです。

スポンジのように時代の変化を吸収

理解不能だし、人口も減るからさとり世代向けには力を入れない。そんな企業をよく見かけます。しかし、若者とは時代を先取りしている人たちです。時代の変化をいち早くスポンジのように吸収する、最も変化が速い消費者なのです。だから若い人を狙うとその後、他の世代がついてきて、次第にマスボリュームになっていきます。

10年後、さとり世代は社会の中核になってきます。そのときが来てから慌てて取り組むようでは、あまりに先見性がありません。