ウコンとシジミエキスで大丈夫か?

睡眠には、体や脳の休息、記憶の定着など、さまざまな役割がある。「一晩寝たら悩みが晴れた」という経験もあるように、心の疲れ(精神的疲労)を解消する効果もあるからだ。二日酔い対策にも睡眠は欠かせない。

「アルコールを分解する肝臓の機能は、血流量を増やすと高まります。人間は横になると立位や座位よりも肝臓への血流量が増えるので、二日酔い対策の大原則は寝ること。アルコール分解に必要な水分(ぬるま湯でも可)を寝る前に摂って、しっかり寝ることが、飲み疲れを翌日に持ち越さない最善策です。この大前提を無視して、ウコンやシジミエキスに頼るのはいただけません」

睡眠は、24時間に占める割合が高く、起きている時間に与える影響が大きい。食事は3分で済ませることもできるし、栄養素はある程度ストックできる。しかし睡眠は一定時間を確保しなければならず、ストックもできない。それだけマネジメントが難しい分、疲労回復の効果も大きいと覚えておきたい。

「睡眠が大事だと言うと、よく『何時間眠ればいいですか?』と質問されますが、答えは『人それぞれ』。年齢によっても変化します。『カラダ手帳』で睡眠時間と翌日のパフォーマンス状態をチェックしながら、ご自身の最適な睡眠時間を探してみてください」

睡眠時間以上に重視すべきは、翌日のパフォーマンスを下げない睡眠の質だ。快眠の要素はいろいろあるが、明るさ、室温、枕を含めた寝具の質の3つに着目。条件を変えながら自分に合った「快眠方法」を編み出す工夫も、疲れマネジメントには欠かせない。

「例えば枕の高さも、今日は1枚タオルを敷いてみよう、今日はタオルを2枚にしてみようと、毎日、いろいろ試してみるといいでしょう。疲れは個性的なもの。最適解を見つけるうえで、自分の体は最高の実験材料です」

明かりや室温も同様だ。煌々と明かりをつけたり、極端に室温を下げたりするのは生理学的にNGだが、室内は真っ暗がいいのか、ぼんやり明るいのがいいか。さまざまなことを試しながら、最も自分の体が休まるパターンを探っていけばいい。

こうして、自分の体と向き合って暮らしていれば、自ずと疲れに対するセンサーが磨かれ、自分に合った疲労対処法も身についていく。そうすれば、大事に至る前に疲れをコントロールし、常に一定のパフォーマンスを維持できるようになるのだ。

「40代、50代の読者に気づいていただきたいのは、『疲れ』には個々の生物学的な衰えに加えて、同世代が『疲れやすくなった』と嘆き出す環境からの心理的な影響もあることです。加齢により疲れやすくなるのは間違いありませんが、『そうだよなあ』と肩を落とさずに、ほんとうに疲れているかどうか、自分の体に聞いてみてください。意外とまだまだ元気かもしれません。その意味でも、『カラダ手帳』で経時的な自分の体の変化をモニターする習慣は大切ですね」

「寄る年波には勝てない」と嘆いたり、若手社員と張り合って無理をしたりする前に、今日から「カラダ手帳」の記入を始めてはいかがだろう。

メディファーム創業者・顧問、医師、医学博士、MBA 裵 英洙(はい・えいしゅ)
1972年生まれ。金沢大学医学部卒業、同大大学院医学研究科修了。慶応ビジネス・スクール在学中に同社を設立、主席修了。著書に『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』。
(まるやゆういち=写真)
【関連記事】
ビジネスマンに必要な睡眠時間はどれくらいか
リラックス効果から二日酔い対策まで……「コーヒーの知られざる健康効果」
「脳のゴミ出し」睡眠で成果をあげる
うつ、アレルギー……原因不明の病がみるみるよくなる食事
無料で簡単!「マイ枕」の作り方