一方のイオンは、「価格だけではありません」と強調する。たとえば、同社の葬儀で人気は「納棺の儀式」と「会葬礼状」。映画「おくりびと」にも登場する納棺の儀を目の当たりにした参列者からは「映画で知っていたが、実際に見るのは初めてで感動した」といった声が寄せられる。
一般には定例様式が多い会葬礼状にも独自性を打ち出す。遺族に電話で取材して、故人のエピソードなどを盛り込んだ礼状にするのだ。
電話で5分ほど話を聞いて文面を書き起こし、遺族に内容を確認して了承を得た後で印刷する。取材から印刷前までの時間は約2時間。通夜に間に合わせるように届けている。定式の礼状は一読後に捨てられるケースが多いが、この礼状は保存する人が多いという。
葬儀の進行や親戚からの細かい注文に気を配り、疲弊した喪主からも「故人の話を親身になって聞いてくれたのはあなただけ」と感謝される。
こうしたサービスも功を奏して、リピーターが多いのも同社の誇りだ。葬儀後に利用客にアンケートを行い、点数をつけてもらっている。「毎週このアンケートが頼りで、幹部の間ではアンケートのための会議を行う」(広原氏)。ただしこちらはイオン式ではなく、石川県和倉温泉の老舗旅館・加賀屋の手法に学んだものだとか。
アンケートでは必ず評価点数もつけてもらう。現在までの平均点は「93.2点」で公式サイトのトップページに堂々と掲げる。点数の算出は10件のうち、一番上と一番下を除く8件の平均点。極めて高いが、少しカラクリもある。実は同社は特約店である提携葬儀社をAからEまでの5段階でランク付けしているのだ。「イオンが専門家をランク付けするのか」と反発を受けたが、ブレずに実施しており、平均95点以上を獲得しないとAランクの業者になれない。イオンから葬儀の依頼がくるのは圧倒的にAランクの葬儀社で、その次がBランク。Cランク以下の葬儀社には仕事はなく、逆にイオンが主催する研修を受けてもらうという。PB商品ではないが“トップバリュー”を重視するのだ。
こうして紹介すると、小売り大手・イオンの「商品開発」の発想そのものといえよう。