スタートして4年半たち、生前予約している「会員」は年間2万件に増えた。年間葬儀件数は非公開だが、6割が会員、4割が飛び込みでの申し込みだという。
会員獲得は4つの方法で行う。(1)電話相談をしてきたお客に会員登録を勧める、(2)イオンの主要店舗で「終活フェア」を行い、訪れたお客に勧める、(3)「永代供養」の生前予約をした人に勧める、(4)「イオンの生命保険」の加入者に勧める、というやり方だ。現在、会員の平均年齢は70歳。自分のことも心配だが、90代の老親が健在という人も多い。
(1)はコールセンターでの対応のこと。同社は札幌市と本社のある千葉市にコールセンターを2カ所持ち、葬儀に関する一切の相談に対応している。専門性を持つスタッフが、お客の苦情とも向き合い、葬儀社の見積書や請求書内容もチェックする。(2)はキャラバン隊を組んで、イオンの国内店舗を巡回して説明しながら会員登録を促す。広原氏も参加している。
(3)の永代供養は、少し説明が必要だろう。同社では3万5000円で寺院や霊園を紹介する事業も始めた。葬儀とともに都市部の顧客が悩むのが、お墓の問題。
「石のお墓はいらない」「子供や孫にお墓で迷惑をかけたくない」といった悩みを汲み取り、事業化した。
(4)は「イオンカード」の付帯サービスの一つで、保険料を葬儀の代金に充当する仕組み。しかもイオンカードの場合、いざ葬儀というときは、一時的に与信限度額も積み増しされる。
「もちろん分割払いもできます。葬儀代金一切をカードで支払えるのはイオンだけ」と胸を張る広原氏は、「価格面ばかりが注目されるが、中身にもこだわっています」と強調する。
なお、公式サイトでもくわしく紹介しているが、ネットから直接、葬儀を申し込むことはできない。その理由を「葬儀はセンシティブな儀式なので、必ずお会いして諸事情を汲み取り、最適な内容を提案したうえでお申し込みいただくため」と説明する。
実は、イオンとほぼ同時期に葬儀費用の価格破壊を進めた業者に「小さなお葬式」(運営はユニクエスト・オンライン)がある。公式サイトでは年間依頼件数1万4000件と明示されており、業界3位の施行実績を誇る。一番人気は利用者の5割が選ぶ「小さな火葬式」17万3000円で、ほかに「小さな1日葬」33万3000円、「小さな家族葬」49万3000円など。単純にイオンと価格を比較すればこちらに優位性がある。