野外ではできるだけ肌の露出を避ける

ライム病は3~32日の潜伏期間を経て高熱、発疹、全身倦怠感、関節痛が出るのが特徴だ。ろれつが回らない、理解力が低下、腕に力が入らないなど脳卒中に似た症状も報告されている。日本では埼玉県、神奈川県、東京都、大阪府などで昨年は17人が発症した。我が国では少ないが、欧米では増加が社会問題化している。カナダのロック歌手、アヴリル・ラヴィーンさん(30)は、昨年春にマダニに咬まれた後、ライム病で5カ月間寝たきりになり、雑誌のインタビューに「死ぬかと思った」と語っている。この病気も抗菌薬で治療でき、米国ではワクチンが承認(日本では未承認)されているが、まれに死に至ることもある。北米、ヨーロッパ、アジアの草原地帯や森林地帯へ行くときにも注意したい。

マダニ感染症を防ぐには、原因となるウイルスや細菌を保有するマダニに吸血されないようにするのが一番だ。マダニに咬まれる危険性が高いのは、マダニを運ぶシカ、イノシシ、野ウサギといった野生動物が生息するような野山や田畑のあぜ道、河川敷、都会の公園を含めて、草むらがあるところ。春から秋にかけて、そういったところへ行くときには、むやみに藪に入らず、帽子、長袖長ズボン、薄手の手袋や軍手、長靴やトレッキングシューズを着用し、できるだけ肌の露出を避けることが大切だ。暑い時期にはちょっと辛いが、首もかまれやすいので、タオルや手ぬぐい、スカーフを巻いたり、ハイネックのシャツを着用したりし、ズボンの裾を長靴や靴下に入れて足首も露出しないようにしよう。ディート(DEET)入りの虫よけスプレーも有効だ。

マダニと聞くと、家の中にいるダニと同じようなものだと思う人もいるかもしれないがまったく別の種類。家ダニは目に見えないくらい小さいのに対し、マダニの成虫は3~8ミリと肉眼で判別できる。病原となる細菌やウイルスを持つマダニに咬まれなければ問題ないので、衣服についても慌てずに、ガムテープなどで取り除こう。屋外から室内、テントなどに入る際や、シャワーや入浴のときは、マダニが体についていないかチェックすることが重要だ。犬や猫にもマダニはつく。ペットを室内に入れるときには、体にマダニがついていないかチェックするのも忘れないようにしたい。

マダニに咬まれたとしても24時間以内ならピンセットで取り除ける可能性がある。除去できないときや刺し口に棘のようなものが残ったら、皮膚科か外科を受診し、除去してもらおう。無理に手の指で抜こうとしたり手で触ったりすると、ウイルスや細菌を自分の体に注入してしまう恐れがある。一方、咬まれた後、発熱、関節痛、頭痛、発疹などの症状が出たら、内科で治療を受け、マダニに咬まれたことを申告することが大切だ。マダニに咬まれても痛みはなく気付かない人もいる。SFTSや日本紅斑熱の発生が多い野山へ行った後に発熱し似たような症状が出たら、一応、山に行ったことを医師に伝えておいたほうがよさそうだ。

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