【タイプ6】許してもらったあと「失言」する

クレームにきちんと謝罪し、お客さまから「わかりました」と許してもらえた瞬間は心からうれしいもの。ホッと胸をなで下ろしたくなるが、そこで油断は禁物。気が緩んだときのひと言で、それまでの苦労が水の泡ということもある。

ワインセラーを販売する会社での出来事。ある家庭で冷却用のアンモニアが漏れ出し、高齢の母親がその臭いで気分が悪くなり、病院に駆け込んだ。娘から猛烈なクレームの電話が入り、担当者は代わりの機械を用意して飛んでいった。

「こんな事故は滅多にないのですが、誠に申し訳ありませんでした」

担当者は平謝りに謝って、アンモニアを嗅いでも健康に害がないことを説明すると、ちょうど母親からも「気分がよくなったから病院から戻る」と電話が入った。娘も安心して「二度とこんな故障がないように」と念を押して話はついたかに見えたが、そこでホッとした担当者がこんなことを口走った。

「よかったですね。これがサリンだったら大変でした」

軽い冗談のつもりだったが、娘の顔色が変わった。再び猛烈な抗議がはじまり、上司を同行しても収拾がつかなくなってしまった。

「許せない、社長に会いたい」

話はこじれにこじれ、最終的に賠償金を支払わされる羽目になったという。

相手が謝罪を聞き入れて話がついたと見えても、怒りの火種が完全に消えたとは限らない。そんな気持ちの温度差を忘れると、つまらない失言で相手の怒りを再燃させてしまうのだ。

失言の原因は、油断だけではない。もともと短気な人やわがままな人は感情のコントロールができず失言しやすい。おしゃべり好き、目立ちたがり屋は不用意な発言が多いし、リップ・サービスのつもりが相手によっては重大な失言になる場合もある。

謝罪がうまく聞き入れられ、許してもらった瞬間に大きな落とし穴が待っていると肝に銘じたい。そこをクリアするまでは、逆なでしない謝り方ができたとはいえないのだ。

(構成=伊田欣司)
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