ローンを返し終えるまでは「使用料」
では、住宅ローンや自動車ローンはどうだろう。
イスラム金融の世界にもローンの制度はあるものの、利用者が銀行に支払うのは利子ではなく、あくまで「使用料」の名目である。
つまり、銀行側にしてみれば、すべてのローンが終わるまでは、その住宅や自動車は銀行のものであり、返済額に上乗せされる金額は利子ではなく「使用料」なのだという考え方だ。
現在のところ、旧宗主国のイギリスの影響下にあるマレーシアがこのイスラム金融の中心地となっている。だが、敬虔なるイスラム教徒の間からは、「このシステムは実質的に利子をとっているのと同じで、ハラーム(禁忌)ではないか」という声も根強く聞かれる。 私もまったく同感である。
イスラム金融の世界では、一見魅力的な各種の金融商品も発売されているが、異教徒である日本人が軽々しく手を出すべきものではない。
※本連載は書籍『面と向かっては聞きにくい イスラム教徒への99の大疑問』(佐々木 良昭 著)からの抜粋です。
佐々木 良昭(ささき・よしあき)●笹川平和財団特別研究員。日本経済団体連合会21世紀政策研究所ビジティング・アナリスト。1947年、岩手県生まれ。19歳でイスラム教に入信。拓殖大学卒業後、国立リビア大学神学部、埼玉大学大学院経済科学科を修了。トルクメニスタン・インターナショナル大学にて名誉博士号を授与。1970年の大阪万国博覧会ではアブダビ政府館の副館長を務めた。アラブ・データセンター・ベイルート駐在代表、アルカバス紙(クウェート)東京特派員、在日リビア大使館渉外担当、拓殖大学海外事情研究所教授を経て、2002年より東京財団シニアリサーチフェロー。2014年からは経団連21世紀政策研究所ビジティング・アナリストに就任。