アメリカがイランを敵視し続ける理由

『面と向かっては聞きにくいイスラム教徒への99の大疑問』佐々木良昭著 プレジデント社刊

中東での紛争の原因を読み解くに当たって注視すべきは、アメリカやヨーロッパ諸国、中でもアメリカの動きだ。アメリカは長年に渡ってイランとの緊張関係を続けているが、その狙いはイランで産出される石油やガスにある。

端的に言えば、イランの石油やガスをどうやって自分たちの思いどおりに、あるいは言いなりに生産させるかということを考えているわけだ。

一方、イランとしては、あくまでも自国の国益を優先させたいため、石油やガスを守ろうと厚い壁で防御する。

そこで、アメリカはこの壁を突き破ろうと、「イランは核兵器を開発する」という言い方で国際世論を味方につけ、周辺諸国や世界の不安をかき立てる。そして、後述するように、この「不安感」がアメリカにビジネスチャンスをもたらすのである。

本音を言えば、イランが核兵器を開発する気があろうがなかろうがそんなことは二の次であり、これはもうプロパガンダ、つまりアメリカの宣伝戦だと思ったほうがいいだろう。「イランは核開発をする危険な国なのだ」と世界に認知させることにより、紛争に火をつけ、結果的にイランの石油を牛耳るという戦略に出ているわけだ。

シリアの場合も同様だ。また、2010年にチュニジアの地方都市に火が付き、エジプト、リビアへと火の手が広がった『アラブの春』にしても同じ構図が見受けられる。つまり、中東の紛争の多くは、エネルギーを確保したいアメリカが火をつけ、それにヨーロッパ諸国が追従するという形で起きている。