「個の力」をどう生かすか

サイバーリテラシー・プリンシプル(16)(http://president.jp/articles/-/14285)でふれた「インターネットは善意も悪意も増幅する」というのも数の力のためだが、これも使い方としてはネガティブである。しかも、これを逆にたどれば、大きな力の源が個人一人ひとりに還元され、犯罪の責任を追及しようとしても、まるでラッキョの皮を剥くように芯に到達するのは難しく、かえって責任が蒸発してしまう。ここでも個の力はマイナス方向に働く。

「個の力」をもっとプラスに働かせることはできないだろうか。いろんな試行錯誤が行われていると思うが、まだ成果はよく見えない。たとえば政治の分野である。昨年の衆議院議員総選挙では投票率が戦後最低の53%だった。半数近くの人びとが投票に行かなかったわけだが、それは選挙へのインターネット導入が遅れているからとは言えないだろう。人びとは自ら選択すべきことがらについて、その力を生かしていない。

多くの人がインターネットを通じて投票するようになったとき、「個の力」はどのように働き、それがどういう政治を実現させるのか。こういった未知の問題も含めて、インターネット時代の「個の力」のありようを考えるべきときである。

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