ネットが「個をあぶりだす」理由

アンダーソンは「アマゾンは全売り上げの半分以上をリアル書店が在庫を持たない本から上げている」ことに注目し、売れ筋ではない商品がけっこうな売り上げに結びつく現象を「ロングテール(「the Long Tail」、恐竜の長いしっぽ)」と呼んだ。インド映画のオンライン販売になると、170万人は顕在化するということである(アンダーソンは後に「半分以上」を「約3分の1」に訂正した)。

この一人ひとりが顕在化することこそがインターネットの力である。インターネットはまさに「個をあぶり出す」。これを広告ビジネスの変化で見てみよう。電通などの大手広告会社は自動車産業、電器企業、建設産業、アパレル企業など、それこそ大企業を顧客にして、新聞やテレビなどのマスメディアに広告を出すことで商売してきた。メディアの方も、たとえば新聞はさまざまな情報をパッケージ化して提供して大発行部数を維持、その多くの読者に向けて広告することで膨大な広告費を稼いできた。

現在の広告の雄はグーグルであり、その収入源はクリック連動型広告である。顧客には大企業もいるとは言え、数の上で多いのは中小企業や個人である。1件ごとの広告費は少ないが、それが積み重なってグーグルを世界有数の広告会社にした。まさに「ちりも積もれば山となる」。フェイスブックも、ツイッターも同じで、彼らはロングテールで商売している。これがインターネットの基本構造である。

だからこそ、インターネットでは「個の力」こそが威力を発揮する。しかしこの「個の力」は、現在のところ、IT企業が主導するビジネスの客体としてしか機能していないように思われる。もっとも本のレビューとかレストランや商品のクチコミのように、ユーザー側の反応が企業や他の顧客に影響を与えている面もあるが、基本的には、ユーザーはインターネットの便益を享受しているようで、実際は、効率的な広告を配信するために利用されている側面の方が強い。