「あっ」という間の出来事

デジタル時代にあっては、「あっという間の出来事」がよく起こる。銀行からの知らせかと思って、添付されたURLをクリックすると、よく似たURLの詐欺サイトに誘い込まれたり、還付金を受け取る仕組みを教わっていると思ったら、自分の口座から多額の金を振り込んでしまったり、書かなくてもいい友人への非難を思わず送りつけてしまったり、目についたURLをクリックしたらアダルトサイトで、いきなり法外な会費を請求される羽目に陥ったり……。

通勤の車内で眠り込み、ふと目覚めると列車がちょうど下車駅を発車したところだったというように、IT社会にあっては、ある行為を行った直後に「しまった」と思うことが多い。送信ボタンを押すとか、URLをクリックするとか、何の手ごたえもない(物理的反動がほとんどない)ままに、甚大な影響を引き起こす行為の引き金を引いてしまう。

スマートフォンを使っていると、交信履歴に誤ってふれてしまい、意図せぬ発信をしてしまうこともある。文字入力にしても、最近のキーボードは“軽く”なるばかりで、そのための誤入力も多い。この引き金の軽さと行為の重さについて、ふだんから考えておくことが大切である。それがサイバーリテラシー・プリンシプル(22)<一瞬の判断を培っておく>の意味である。

便利な道具を間違って使わない「転ばぬ先の杖」を常に用意しておく。そのためには、ふだんから起こりうる事態を予想し、こういうときにはスマートフォンには手をふれない(情報発信しない)ようにしようとか、念には念を入れてセキュリティ対策をとっておこう(大事なデータはハードコピーをとったり紙の手帳にメモしておく)といった予防手段をとっておく、要は万一に備えた予行演習を怠らないことが大事である。