アメリカの2つの保険会社が経営統合することで相互補完によるシェア向上やコストカットなどのシナジー効果が見込まれたものの、実際は社員気質や意思決定システムなどの違いから蹉跌を来し、空中分解してしまうケースなどが紹介されています。改めて経営にはスピード・大胆さとともに、慎重さが不可欠だということを痛感させられます。『コトラー8つの成長戦略』もやはり過去の失敗・成功事例を用いたうえで、イノベーションの重要性を説いています。

含蓄のある歴史上の名言を紹介する『日本人の叡智』で印象に残っているのは明治期の出版業者・大橋佐平という人物が語った「植木を移すに必ず時あり。時を失すればその木枯るることあり。これ労して益なし」。チャンスを逃すな。そしてチャンスは自分でつくれと。そうした経営者の原点ともいうべき姿勢をこの本で再確認できます。

同書では、明治時代の歴史家、山路愛山が「実業家宜しく歴史を読むべし」という言葉を残したことを知り、冒頭に言った、私の経営に対する考え方がより深まることになりました。

歴史、教養……自分だけのバックグラウンドを持て

■司馬遷が発見した経済の本質

『史記・貨殖列伝を読み解く』
  林田愼之助/講談社

中国前漢時代の歴史家・司馬遷が発見した「経済」の本質が書かれている。無冠ながら時の王者をしのぐ実力を蓄えた素封家(大金持ち)たちの思考法や処世術は現代のビジネスシーンにも十分通用する。「値上がりが極まれば、下落にむかい、値下がりが極まれば、また上がります。高値のときは、汚物を出すように売り出し、低値のときは、珠玉をとるように買い入れることです。商品と貨幣は、流れる水のように動かすべきでありましょう」などのくだりが印象的。

■スピード命のフレームワーク

『90日変革モデル』
  ベナム・タブリージ/翔泳社

3M、GE、アップル、日産、IBM……。過去20年間に変革を果たした500社以上のサンプルから56ケースを分析し、成功要因を抽出。その代表例が90日変革モデル。30日ごとに3つのフェーズにわけて実行計画を立案するフレームワークを提示している。「急速」に「効果的」に企業を変える「実践」方法が満載。