「年収に関係なく20~30代の多くが対象」
しかし、本当に“機能”するのか疑問だ。本来、裁量労働制の適用者は、自分の裁量で自由に仕事をやることができ、「出勤・退社時間の自由」が原則だ。政府も仕事と子育てとの両立が可能になると推奨している。
だが、現実はそうなっていない。導入企業の実態は裁量労働制を適用されていない社員より労働時間が長い上に、49.0%の人が「一律の出退勤時刻がある」と答え、40%超の人が遅刻した場合は「上司に口頭で注意される」と答えている(労働政策研究・研修機構2014年6月調査)。
法案が成立すれば、年収に関係なく20~30代社員の多くが対象になるだろう。経営者は善人ばかりではない。納期に間に合わないから、目標未達だからとか、会社の都合でいろいろ理由をつけて遅くまで働かせる経営者も出てくるだろう。
そうなると自由な働き方どころか、長時間労働をさせられた上に残業代も支払われなくなる。「裁量労働制の拡大」というもう一つの「残業代ゼロ制度」の行方も注目するべきだ。