最近、講演の際などに、会場にいる人に質問をして、とても意外に思うことがある。

「三つ玉のお手玉」ができる人が、案外少ないのだ。

玉を2つ使ってやるお手玉は、誰でも、おそらくやったことがあるだろう。それほど難しくはない。しかし、三つ玉になると、すぐにはできない。玉を投げるタイミングなど、いろいろ工夫して、習得しなければならないからだ。

それでも、三つ玉のお手玉は、ものすごく難しい、というわけではない。できる人ならばすぐに成功するだろうし、できない人も、何日か練習すれば、おそらくできるだろう。だから、三つ玉のお手玉ができる人は、それなりに多いのではないかと思っていた。

ところが、このところ、何会場かで来場者に聞いてみると、三つ玉のお手玉ができる人の割合が、とても少ない。多くて、せいぜい数パーセント。会場によっては、1パーセント以下のこともある。

ほんの少し練習すればできるはずの、三つ玉のお手玉。それに挑戦して、習得した人が、せいぜい「100人に1人」くらいだという事実は、いったい何を意味するのだろうか?

人間の脳は、加齢とともに、ある程度衰えるのは仕方がない。しかし、生活習慣によって、いくらでも若々しく保つこともできる。

脳の「アンチエイジング」においてもっとも大切なのは、「新分野」に挑戦することである。自分ができるかどうかわからないことに取り組んで成功すると、脳の報酬系のドーパミンが前頭葉を中心とする回路に放出される。

ドーパミンが放出されると、脳は喜びを感じるとともに、そのきっかけとなった行動の回路が強化されるという「強化学習」が起こる。