6. ロジカルに考えない
……データはあくまで「後付け」
データを収集し、マーケティングに活かそうとしている企業は少なくない。しかし、私はデータベースマーケティングに懐疑的だ。データをもとに論理的に考えていくことで可能になる施策もあるが、ロジカルに導き出した答えは、遅かれ早かれライバルもたどり着く。
データベースマーケティングといえば、POSを最大限に活用しているコンビニ業界が思い浮かぶ。しかし、セブン-イレブンのおでんはPOSから生まれたわけではないだろう。もともと存在しなかった商品については、データをもとにロジカルに考えても答えを導き出すことはできない。誰かが「おでんを置いたら売れるはずだ」とひらめいて、はじめてアイデアとして浮かび上がってくる。
意識してほしいのはアブダクションという思考法だ。論理的な思考法としては、法則からロジックを重ねて結論を導く「演繹」と、事例の積み重ねで結論を導く「帰納」が有名だ。一方、アブダクションはいきなりひらめきで仮説を立て、それを検証することで結論づけるというやり方をする。演繹でも帰納でもない、第3の思考法だ。非論理的であり、悪くいえば根拠のない思いつきに過ぎない。しかし根拠にとらわれないからこそ、既存の枠を飛び出す自由な発想ができる。
もちろん単なる思いつきのままでは、まわりを説得することは難しい。仮説をデータやロジックで検証して、説得力を持たせることが重要だ。最初は根拠のない思いつきであっても、「別の業界だが、このようなデータがある」「この企画には心理学の理論的な裏づけがある」と、後付けでも構わないので理論武装すれば、社内で企画を通しやすくなる。データやロジックは、アイデアを出すためではなく、出たアイデアを補強するために活用したい。