それでも混乱を避けるのが難しいケースもある。昨年4月、資源エネルギー庁はガソリンスタンドに対して価格を総額表示にするよう要請した。ドライバーが走行中、瞬時に税抜価格かどうかを判断するのは難しいからだ。そのほか、鉄道構内のポスター、テレビコマーシャルなど、短時間しか目にできないものは、誤認を招きやすい。
これらの誤認防止措置が十分でなく、税抜価格を税込価格と勘違いして支払いをしたときは、どのように対応すればいいのか。山口弁護士は、こうアドバイスする。
「単に見落とした、勘違いしたという理由では無理ですが、全く誤認防止措置がなされていない悪質なケースの場合は、まずは事業者に話をして、返品や差額の返金を交渉してみるといいでしょう。交渉がうまくいかなければ、弁護士や消費生活センターに相談してください。高額の契約の場合は、損害賠償請求という選択肢もあります」
今回、特例で2種類の価格表示が認められたのは、消費税率10%への引き上げが今年10月に予定されていたからだ。総額表示を義務づけたままだと、「5%から8%」「8%から10%」と、短期間に値札を2度貼りかえる必要が生じる。その手間を省く名目で、税抜表示が解禁された。
しかしよく考えると、その立法趣旨は怪しい。今回の特例は時限法。特例で税抜表示を選んだ事業者も、まず「税込から税抜」、特例失効後に「税抜から税込」と値札を2度貼りかえることになるため、事業者の負担は変わらない。にもかかわらず、あえて特例措置を設けたのは、税抜表示を解禁することで消費者に価格を安く誤認させ、増税による消費の落ち込みを緩和するためではないかと勘繰ってしまう。だとしたら、政治的な意図で混乱させられる消費者はたまったものではない。税抜にしろ、税込にしろ、早急に統一してもらいたいものだ。