国の借金はさらに増え続ける

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図1 2050年、GDPがブラジルに抜かれ、5位に転落

では財政状態はどうか。国の借金は13年6月末時点で1000兆円を超えた。国の税収が年間約40兆円なのに対し支出は約90兆円だから、今後も増え続けることは明らかだ。それでも財政が落ち着いているのは、市場で消化される国債のほとんどを日銀が買い入れているためだ。「これにより価格機能がほとんど失われ金利が抑えつけられているため、財政が安定しています。ただこの金融抑圧(フィナンシャル・デプレッション)が永久に効くかというと難しい」と法政大学経済学部准教授の小黒一正氏。

日銀の政策の本意はインフレを起こすことにある。インフレになると長期金利が上昇し1000兆円の債務がある財政にインパクトを与えてしまう。現在のように金利1%水準であれば利払い費は10兆円弱で済んでいるが、3%になると30兆円に膨れあがる。

「そうなると20兆円の増加分の穴埋めは大変です。そこで日銀はインフレ抑制手段として、通常は国債を売ってお金を回収する。でもそれをやると国債の金利が上昇してしまう。日銀のコントロールが利くうちに手を打たないと、どこかで破綻することは明らかです」(小黒氏)

山崎氏は「安倍政権の政策が順調に機能したとして、例えば3年後ぐらいにインフレ率2%になり、実質成長率が1%、2%、名目成長率で3、4%になるとそれ以上金融緩和を続ける意味はないから、日銀が国債を買わなくなる。すると金利も上昇する」と見ているが、想定外な金利上昇が起きると「有価証券運用が多く預貸率が低い地銀や信金に破綻するところが出てくるかもしれない」と危惧する。

ただ個人の生活に限れば、そう恐れることはないのかもしれない。「所得と支出の調整を図り、自分が属している階層(生活、仕事、収入等のレベル)をベンチマークにして外れないような生き方をしていれば、その時代なりのまあまあの生活ができるはず」(山崎氏)。

薄氷を踏むような借金のコントロールは日銀に任せて、私たちは貯蓄に励み「30年後でも稼げる収入の種を今のうちにつくっておく」(山崎氏)ことに集中しよう。

深野康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。完全独立系ファイナンシャル・プランナーとして個人のコンサルティングを行いながら、さまざまなメディアを通じて情報を発信している。

山崎 元
(やまざき・はじめ)
経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、12回の転職を経て現職。専門は資産運用。

小黒一正
(おぐろ・かずまさ)
法政大学経済学部准教授。1974年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了後、大蔵省入省。一橋大学経済研究所准教授などを経て、2013年4月より現職。専門は公共経済学。
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