「市場は半分になり、企業の半数は倒産するか再編の対象になるだろう」

企業の業績悪化・人員削減の流れが止まらない。つるべ落としの現状を前に、永守重信・日本電産社長はこう喝破した。

雇用不安が膨らむなかで、サラリーマン個人が生き残っていくには何が必要なのか。独立や転職を視野に入れ、難関の資格試験に挑戦するケースも増えている。

だが、ビジネス・スキルに関する数多くの著作を持つ作家の野村正樹氏は「不況下の独立・転職はあまりにもリスクが大きい」と、安易な資格取得ブームに警鐘を鳴らす。

「そもそも日本では、資格を持っていることが必ずしも転職に有利に働くわけではありません。また、その道で独立しようにも業種ごとに顧客開拓の壁がありますから、ミドル層になってからの開業は難しいと考えるべきです。資格のための勉強をするにしても、いまの会社に勤め続けることを前提として、仕事に役立ちそうな資格にチャレンジするのがいいでしょう」

迷える現役ビジネスマンに、野村氏はこうアドバイスする。野村氏自身はサントリー勤務のかたわら作家としてデビューし、長く「二足のわらじ」を履いてきた経験を持つ。「会社を辞めるな」と忠告するのは、その時期にさまざまな実例を見てきたからだ。

「いつの時代も、事務系では中小企業診断士や社会保険労務士、司法書士といった資格をとり独立する人がいるものです。しかし好景気のときはいいものの、不況に転じると、決まって消息を聞かなくなるのです」

では、「仕事に役立ちそうな資格」とは何だろう。

「財務・経理担当ならば税理士の勉強をする。営業マンでもマイクロソフト系のIT資格をとるとか、もっと簡単にペン習字を習ってもいい。手書きの詫び状が上手に書けるというだけでも、アピールにはなりますからね」

それでも、資格取得がそのまま独立開業や高収入に直結する「強い資格」は存在する。事務系では弁護士、公認会計士、弁理士、不動産鑑定士、司法書士、税理士というあたりだ。

しかし、資格試験にくわしいキャリアコンサルタントの上田信一郎氏によれば、こうした難関資格のなかでも「食えるかどうか」には濃淡がある。

たとえば超難関の弁護士や公認会計士は、独立するにしろ事務所に所属するにしろその強さは別格だ。ただ、弁理士や税理士には「そこまでの強さはない」という。