不健全な「マネジメント」に危機感
こういった感覚は、大学生になって就職していく先輩たちを見たり、起業して自分が実際に企業組織と関わり合ったりすることなどでますます強くなっていくわけです。そこでとにかく叫ばれるのは、目的合理性や管理主義に基づいた「マネジメント」の偏重と徹底。それが窮屈で気持ち悪くてたまらないわけですが、「自由でありたい」とか「個性的でいたい」などというよりは、なんとも言えない「精神的な不健全さ」に危機を覚えました。
小さい頃、誰に何を指図されたわけでもないのに何かに夢中になって、時間が経つのも忘れるくらい没頭したように、生涯にわたって延々と続く日々の仕事や生活を楽しむことはできないものなのか? あたりまえに設計された仕事や職場、社会人としての成長モデルを見直すことはできないものなのか? そんな違和感や葛藤を抱えながら、大学院で研究するようになりました。
院生時代には、若者の企業組織内におけるワークモチベーション調査などを行っていました。従来は、職場環境の不備を解消し、仕事の内容や規模、待遇といった会社から与える「外的な報酬・動機付け」を充実させることで、従業員満足度は向上すると考えられていました。
しかし、調査を進める中で、安定したポジションや報酬よりも、新しい出会いや出来事、多様な価値観に触れること、好奇心を満たすことなどに重きをおく傾向がみえてきました。これらは、「内的な報酬・動機付け」とも呼ばれます。それを高めるためには、突然の変化や偶然を歓迎し、想定外の事態を排除しようとしない、柔軟でひらかれた態度が必要であるということも分かってきました。
しかしこれは、従来の管理型組織や職場環境ではなかなか実現が難しいものです。目的合理性を是とした組織では、減点主義による評価制度があたりまえで、そこでは「想定外」や「偶然」はできるだけ取り除きたいやっかいな存在です。歓迎できるわけがない。