2010年1月に破綻したJALの上海支店で働く中国人女性スタッフ、王潔莉氏と馮潔氏に話を聞いた。日本の「折れた翼」を再生させた稲盛氏の経営手腕は高く評価され、わずか2年半で再上場を果たした。稲盛哲学によって組織が生まれ変わったわけだが、現場で働く人々はどう感じていたのか。王氏は会社が一丸となってきたという。
「稲盛会長が経営に加わってからは、社内に一体感が出てきたように感じます。上海支店だけでも240人が働いているのですが、以前は他部署の仕事はお互いあまり気にしていなかった。それが今では自分たちのことだけではなく、周囲の仕事にも気を配る雰囲気が出てきました」
経費削減の意識も働くようになったというのは馮氏だ。
「無駄なことを徹底して省くようになったと思います。例えば、以前は書類のプリントアウトは片面しか使っていませんでしたが、今では両面印刷が基本です。カラーコピーも減りました。コピー機の上には『カラーコピー1枚=1.5元の肉まん』と書いた張り紙が張られるようになりました。湯気の立っている熱々の肉まんの写真も張られているのでわかりやすいんですよ」
稲盛哲学を学ぶ勉強会も、社内で行われている。稲盛哲学をもとにした「日航哲学」を社内でまとめ、稲盛哲学を学ぶ「フィロソフィ勉強会」というものを社内で行っており、各自が自分の感じたことや考えなどを発表し合っている。各支店から選ばれた社員が北京の大会に参加する。そこでさらに選ばれた1~2名が日本で発表する。馮氏は稲盛哲学を学ぶうちに気が付いたことがあるという。
「中国にも敬天愛人という言葉がありますし、『心を大切にする』という稲盛会長の言葉は中国の伝統的な考え方と通じる部分も大きいと感じています。ただ、現在ではそうした昔の考え方が中国では忘れられてきて、精神的なものより物質的な豊かさや欲望を追求する傾向が強くなっています。中国にかつてあった考え方も、稲盛哲学からは学べると思っています」