年功序列賃金とは「年齢による差別」

でも、ちょっとおかしいと思いませんか?

59歳と60歳で急に能力が落ちるとは考えられません。体力的にも、今時の60代前半なんて、20代の草食系男子よりエネルギッシュな人も数多く存在します。また、現実問題として、今まで営業していた人が、急に経理の仕事はできませんので、定年前と同じような仕事をすることになります。工場でも、それまでと同じ作業を担当し、それまでと同じ程度の時間を働きつづけている人も少なくありません。ならば「なぜ、同じような仕事を続けているのに、誕生日が来ただけで給与が半減してしまうのか」と不満を抱くことは自然な感情といえるでしょう。

しかし、これは日本の賃金制度と雇用慣習が大きく影響しているのです。

日本では成果主義が広まりつつあるとはいえ、まだまだ年功的賃金を引きずっています。(人事&給料の謎【3】バブル入社組が危ない! 「年功序列賃金」は崩壊したのか http://president.jp/articles/-/13555 参照)

そのため、賃金のピークが50代となる。その一方で、ちょっと仕事ができないくらいでは解雇されませんので、「賃金に見合った仕事ができていない社員」の割合も50代が最も多くなります。そこで、本当は給与以上の仕事ができている60歳も少なからず存在するものの、大多数の人に引きずられて「あなたも皆と同じように賃金半減でガマンしてね」となってしまうのです。

極端に表現すれば、年功序列賃金とは「年齢による差別」です。同じ仕事を、同じ能力で行っていたとしても、30歳だからという理由だけで、50歳の社員より給与が低いのですから。その反動が、60歳以降の再雇用時に回ってきている、と言えるでしょう。