【田原】今は配達もやるんですか。

【鈴木】創業当初、酒店を中心に店舗開発をしていたころは、「セブン-イレブンに変えれば、配達は不要になり、お客様に買いにきていただけますよ」がうたい文句でした。それが、高齢化が到来した今、「また、配達の時代に戻ってきました」と説明し、トヨタ車体が開発したコムスという超小型電気自動車も活用して、全国の店舗で導入を進めています。

【田原】配達なんかしたら、手間がかかり、効率が悪くなりませんか。

【鈴木】ポイントは配達の際、ご用聞きをして、注文もいただくことです。

【田原】ご用聞きまでやる。

【鈴木】そのとき、威力を発揮することになるのが、今、グループをあげて取り組んでいる、ネットとリアルを融合したオムニチャネルです。コンビニ、スーパー、百貨店、各種専門店、ネット通販など、グループのあらゆる業態が扱う商品について、24時間、いつでもどこにいても買い物ができ、都合のよい時間や場所で商品を受け取れるようにする。例えば、一人暮らしのお年寄りのもとへ、近くのセブンーイレブンのスタッフが、食事宅配サービスの弁当を届けに伺う。その際、会話の中から近々、子供の家族が集まることがわかった。そこで、持参したネット端末を使い、ニーズに最適な商品を紹介し、その場で注文を受け付ける。今までネット通販に縁がなかったお客様も、ネットとリアルのつぎめを感じることなく買い物を楽しむことができるようになり、新しい需要を生み出せる。このオムニチャネルの基礎固めにこれから注力します。

【田原】そうなると、ここしばらくは現役生活が続きますね。最後にご自身のことを伺います。鈴木さんはぼくより2つ年上。何でそんなに長く現役でいられるんですか。

【鈴木】最近は自分自身、年をとったとつくづく感じますよ。ただ、田原さんも同じだろうと思いますが、よく物忘れはしても、何かを理解したり、新しいものを提案することはそんなに衰えないですね。自分勝手な感想をいえば、社内でも新しい発想を生み出す割合は私が多いような気がします。提案し、みんなが取り入れてくれて、それがうまくいくと、また提案しようと思う。

【田原】新しい提案をする際、どうすれば、鈴木さんみたいに世の中の変化を見抜けるのでしょう。

【鈴木】それは、よく聞かれます。おまえはいろいろと提案するけれど、どういう勉強をしているのかと。実は勉強も情報収集も意識してしているわけではありません。例えば、毎日の送迎のクルマの中でラジオをつけっぱなしにしておくと、これはと思う情報が無意識のうちに、頭の中のフック(釣り針)に引っかかる。それが何かのときに役立つんです。