今のスキルを、もっと景気のいい場所で
いまの仕事をこのまま続けるのはまずい。かといって34、5歳から新しいスキルを身に付けるのもしんどい――そういう状況に立たされて始めて考え始めたのが、「それなら今のスキルを使ってもっと景気のいい場所で働く方法はないか」ということでした。じゃあ海外で働けばいいじゃん、というわけですね。
それで、最初は僕もヨーロッパやアメリカ、オーストラリアといった先進国から職探しをスタートしたんです。でも、リーマンショックの後でワーキングビザを取るためのハードルが上がっていて無理でした。
なので、次にシンガポールや香港で仕事を探してみたんです。そうしたら、こっちにはたくさん仕事がありましてね。ビザも余裕で取れるし、これはイケるなと。そして、せっかくだから他の国も探してみようと思って、タイやインドネシアを探したらもっと仕事がある。しかも僕みたいな10年以上働いてきたハイスキルな人よりも、もっと若い人が欲しいと言っている。これは面白いなと思いました。
当時は就職氷河期で、日本では若い人の仕事がないと言われていました。それなら海外で働けばいいじゃないか、というのは大きな発想の転換に思えました。日本である程度のキャリアを積んだエンジニアであれば、シンガポールや香港の企業でそこそこの給料を貰える。若い人でもタイやインドネシアにいけば日本の20代の正社員くらいの給料がもらえる仕事がたくさんある。
そうして知っていった海外就職の話を、以前から続けてきたブログに書くようになったんです。それが出版社の目に留まって『アジア転職読本』という本になった。実はシンガポールと香港の企業からは内定をもらっていたのですが、こうして文章を書いたり講演をしたりという機会も他にないだろうと思って、しばらく海外就職の取材を続けてみようと考えたことが、現在の僕の生活スタイルへとつながっていったんです。
いまはカンボジアでサムライカレープロジェクトを進めていますが、まあ、最初はこんなプロジェクトに本当に人が来るのかな、と思っていました。でも、なんだかんだで2カ月連続で満員になったのには驚きまして。
僕らもこういう前代未聞の研修が受講者にどんな利益を与えられるかが分かっていませんでしたが、実際にやってみると就職活動中の学生から「この研修の話をしたら内定が決まった」という声が届いたり、大手の人材会社から人材教育に使いたいとオファーを受けたりと思わぬ反響があったんです。
大学生が現地の社長に気に入られて1年間休学して働く事になったり、受講生のなかからカンボジアやフィリピンに就職する人がでてきたり、ついにはカンボジアで起業する人まで現れたり、面白いことがおこっています。
卒業生も40人を超え、多くの人に受講して良かったというフィードバックをもらっています。さらに多くの人に参加してもらえるよう1週間の短期コースや、英語も学べるコースなどを作ったり、企業研修を受け入れたりと、事業を拡大中です。
私が現地に住むことになり、よりできることは増えているので、現場のフィードバックを聞きながら、より面白い人材を輩出できるような場を創っていきくため、爆速で行動しています。