カメラ付き携帯、ノートPC、一切持ち込み禁止
トヨタは13年4月、「事業ユニット」と呼ぶ4部門を設置する大幅な組織改編を実行した。4部門は、高級車「レクサス」事業の「レクサス・インターナショナル」、先進国を担当する「第1トヨタ」、中国を含めた新興国担当の「第2トヨタ」、そして部品開発と製品化を担当する「ユニットセンター」。研究・開発、調達、生産、販売など機能別に分かれていた従来の体制に、4つの横串が刺さった形である。
「働き方改革」は、新組織であるユニットセンターの設置に対応し、研究・開発と生産技術の技術者を集約してスタートさせた。これまで開発と生産技術のやりとりには、多くの時間がかかっていた。たとえば、研究・開発の設計者がエンジン部品を新たに設計したとする。完成した図面に対し、生産技術チームがコストや品質、量産のやりやすさといった視点から検討を加える。「こうしたほうが、工場ではつくりやすい」と研究・開発に戻され、国道248号線を挟んで図面は行き来するのだ。両機能が自分たちのベストを追求して、ラグビーのスクラムのように押し合うが、ささいなことで必要以上に時間が費やされることもあった。これを、最初から設計者と生産技術者とが一緒に働くことで、開発スピードのアップ、さらに新技術の創出を目指す。いわゆるトヨタの「もっといいクルマづくり」を加速させる狙いがある。
共同開発棟は、地上12階、延べ床面積は約10万平方メートルの建物。将来的には約2800人を勤務させる計画だ。増員されているわけではないのに、「トヨタが、新施設を建設するのは珍しい」とトヨタ幹部は話す。
研究・開発と生産技術のエンジニアが一緒に働いているのは、7階から9階の一体開発オフィス(これ以外の階は、部品や試作品、製品などの評価エリア)。
エレベーターは1階と7階にしか止まらない。その7階にはセキュリティーが厳重なゲートがある。運転免許証や保険証など身分を証明するものの提示が求められ、カメラ付き携帯電話(スマホ含む)やノートPC、ICレコーダーなどは一切持ち込めない。ゲートの外側と内側には会議室がいくつもあり、内側には小さなコンビニのような売店がある。