13年度に営業利益の過去最高を更新したトヨタ。この「V字回復」の裏側には、知られざるある“会議”が存在していた。

資料を持ち込まずざっくばらんに会話

愛知県豊田市トヨタ町一番地のトヨタ自動車本社。毎週火曜日の朝になると、いつもは物静かな15階建てビルの上層階にある役員会議室が、たちどころに賑やかになる。

トヨタグループ33万人の頂点に立つ豊田章男社長をはじめ、代表権を持つ6人の副社長が相次いで「おはよう」と会釈をしながら会議室に入る。円形テーブル前のイスに腰掛けると、ワイワイ、ガヤガヤとしゃべり始める。通常は1時間程度だが、議論が熱くなると2時間以上に及ぶこともある。

最近、朝時間を有効活用する企業が増えてきていて、トヨタの朝一番のトップミーティングもそうした流れの一つだ。しかしながら、他社にはない“アキオ流”のこだわりがある。

その一つは「円形テーブル」の存在だ。企業などの会議室のテーブルは“コの字”形の配列が一般的だが、豊田社長は、「円卓にこだわるのは、上座とか下座を意識しないで、対等の目線で自由闊達にディスカッションができるのがいい」と説明する。

もう一つは、1週間の中でも「火曜日」に開くこだわりである。

「普通は『よし、今週もがんばるぞ』と、週初めの月曜日の朝を考えますが、それでは土日を挟んでも金曜日の夕方までに仕入れた情報と大きな変化はなく、前の週の反省会で終わってしまうことが多い。火曜日なら、月曜日中にその週のいろいろな予定や案件を担当する部署から詳しく把握できるので、ホットで前向きなディスカッションが期待できる」と豊田社長は語る。

さらに、“円卓会議”の議事進行にもマンネリ化を防ぐための目的がある。東日本大震災に対する対応策など、どうしても先送りできない緊急の課題以外は、話し合うテーマを事前に決めておくことはしない。ギスギスした重苦しい雰囲気を避けるために進行役の議長もいなければ、取締役会のような経営上の重要な決議を行うこともしない。副社長全員が集合した時点で、それぞれ気になる話題を自主的に挙げてもらい、その都度、共有すべきテーマを選択して、フリートーク形式で議論を交わす。社業に直結した経営戦略から海外事情、政治・文化・社会などの時事問題までざっくばらんに話し合う。

「資料を持ち込まない」のも原則で、「それらを認めると、事前に根回しをして、資料を部下に作らせることになるため、時間が無駄になり、なかなか本音が伝わりにくい」(豊田社長)からだそうだ。それでも、例外的にテーマを設定した場合は、「より理解を深めるために、事務局から簡単な資料配布を受けたり、担当の執行役員らを同席させるなど、臨機応変に対応するケースもある」(トヨタ幹部)という。