タブレット端末で情報の共有化

PR用につくられたピンクのクラウン。好評だったため、13年9月に限定受注した。(ロイター/AFLO=写真)

トヨタの会議は、豊田章一郎名誉会長や奥田碩元相談役などの会長・社長経験者の長老も出席する「経営会議」をはじめ、専務・常務の執行役員を除く16人の取締役で構成する「取締役会」、執行役員を含めて主に実務的な事業案件を決裁する「副社長会」などの定例会議が、毎月1回程度のペースで行われている。

これらに加え、火曜朝一番の“円卓会議”は、リーマン・ショック後の赤字転落という“大嵐”の中で船出した豊田新社長をサポートするためにスタートした。そのために、内山田竹志副社長(当時、現会長)ら代表権を持つ経営者同士がコミュニケーションを綿密に図って、お互いのベクトルを合わせることが主な目的である。

ベクトルを合わせるため、「IT(情報技術)に造詣が深い」といわれる豊田社長の肝いりで、役員や社員同士がタブレット端末を積極的に活用し、出張先での画像・映像を送受信するなど、情報を共有化している。13年7月22日、岐阜県多治見市に国内外の販売店で車検・修理に携わるサービススタッフの人材育成を強化するために新設された研修施設「多治見サービスセンター」の竣工式でもタブレット端末が活躍。竣工式には、古田肇・岐阜県知事らを来賓に迎えて、豊田社長や前川眞基副社長らも出席した。その様子は役員専用の閲覧サイトに送信され、豊田市の本社や東京、名古屋などで執務中の副社長にもネットで同時に伝わる仕組みを構築した。情報のシームレス化は、豊田社長が率先して行ってきた改革の一つである。

海外出張などでやむをえず本社にいない人を除き、毎週火曜日の朝には社長と副社長全員が顔を合わせる“円卓会議”も5年。初開催時から、副社長の顔ぶれはすべて入れ替わったが、朝の貴重な時間を利用して意思疎通を図ろうとする目的は変わらない。しかも、豊田社長が不在の日でも、副社長だけで開くようになった。これは、豊田社長への報告・連絡が大きな目的ではないからだ。大手企業でもワンマン経営者が仕切る会社では「社長が出席しないと何も進まない」というケースもみられるようだが、今のトヨタには当てはまらない。