執務スペースの席数は人数の7割しかない

「働き方改革」の中心的役割を果たすのは8階である。ユニットセンターを統括する須藤誠一副社長の部屋も共同開発棟8階にある。8階へは7階から中央階段で上る。筆者がここを訪れるのは13年3月27日のプレス向け見学会以来、2度目。前回は、働く人の姿はまばらだったが、いまは多くの人が詰めている。

オフィスの特徴は大きく3つある。

1つ目は広さだ。8階の延べ床面積は90メートル×110メートルの9900平方メートル。これは他の階と同じだが、8階を広く感じるのはセキュリティーのゲートがある7階のように多くの壁で仕切られていないためだろう。

9900平方メートルには更衣室や廊下なども含まれるが、国立代々木競技場第一体育館のアリーナ面積4002平方メートル、さいたまスーパーアリーナのアリーナ面積6175平方メートルよりもはるかに広大だ。

「これだけ広いオフィス自体、世界的にも珍しい。(13年)2月から稼働が始まり、4月に一気に人が増え、8月には(研究・開発と生産技術の)両機能から合計1000人ほどが8階で働いている」と、一体開発オフィスを企画した設備企画室の担当者は話す。広いオフィスで迷子にならない工夫として、執務エリアの椅子は南半分はオレンジ、北半分はグリーンと色分けされている。なお、9階も同じ広さがある。

2つ目は仕事の効率や社員間のコミュニケーションを高めるためのスペースの配置だ。大半の人、あるいはプロジェクトにはロッカーが割り当てられるが、執務エリアはフリーアドレスになっている。社員が個々に机を持たないスタイルだ。そのため、このオフィスには固定電話がない。1000人には、内線電話として使う従来型携帯電話(ガラケー)が支給され、ノートPCを全員が持ち歩き、書類の電子化によるペーパーレス化を進めている。

特筆すべきなのは、働いている人の数の7割しか執務スペースに席がない点だ。

「出張している人も多く、席を100%用意することが非効率だと判断した。70%は、私たち企画室が独自に設定。また、ガラケーとノートPCを持ち歩くスタイルは、25人いる私たち企画室で12年末から先行して取り入れた」と同担当者は話す。

執務エリアを囲うように窓際には(1)「ナレッジカフェ」、(2)「部品検討エリア」、パーティションで区切られた(3)「シンキングエリア」が並ぶ。(1)はコーヒーや紅茶が飲めて、ファミリーレストランを模したテーブルとソファもある。ファミレスにいる気分で気楽な話し合いができる。(2)には耐加重テーブルがあり、試作品を持ち寄って検討しあえる。(3)は1人で深く考えたいときに利用するエリアで、CAD(コンピュータ支援の設計)を使える個室(外からは覗ける)もある。

一方、南北の境界にはCADを使える(4)「ミニSEルーム」、立ったままの会議ができる(5)「クイックミーティングエリア」がある。訪問したこの日は、ホワイトボードや27インチモニターを使える(5)の利用率が高かった。

(1)~(3)と反対側の窓側には、(6)「車両ユニット検討エリア」がある。薄いグレーに塗装されたフロアは、実際の車両を入れられる耐加重フロア。技術・開発と生産技術のエンジニアが、図面や部品、車両を一緒に見ながら議論できる場を多く配置している。

3つ目はスピーディーに意思決定するための工夫だ。フロアの中心には「意思即決エリア」が設けられている。

現在は部長級の8人がいて、外側に向かい席が12席ある。一方、エリアの真ん中にはテーブルがあり、椅子を180度反転すればすぐに向き合って話し合いができるのだ。フロアには壁がないため、他のエリアと同様に内部の様子は丸見えだ。どの部長がいて、誰と誰が協議しているのか、一目瞭然である。

大きな決裁が必要なときには、意思即決エリアに隣接する副社長か専務の扉をノックする。