「たとえば小山さんは、日光金谷ホテルという老舗ホテルを盛り上げるための方法の一つとして、スタッフ全員に新しい名刺をつくったんです。裏面にはその人の一番好きなホテルの場所を写真に撮って印刷する。全部で30種類あって、全種類集めるとホテルのミニ写真集になる。 それがほしいお客さんがスタッフに“名刺をください”と言うことで、コミュニケーションが生まれる。従業員も自分のホテルへの愛情を再確認するというわけです」(成尾さん)
「チームくまモン」はこれらの著書を読み込み、一人ひとりが小山薫堂になりきることで、数々のアイデアを生み出していった。成尾さんが心がけたのは、改まった会議の体裁をとらず、自分の席にいながら「こんなのいいんじゃない」と雑談のようにアイデア出しをすること。
誰かが「おもろない」アイデアを出したときは、「そこ、スルーしない」と突っ込む技もお笑いの本場、大阪で身につけていった。しかし熊本県内のメディアなら県が発信する情報は取り上げやすいが、大阪から見れば熊本県は47都道府県の1つにすぎない。どうしたらマスコミが取り上げてくれるか、予算のない中で知恵を絞るしかなかった。
そこで考えたのが、「神出鬼没大作戦」である。熊本県のキャラクターであることを隠してくまモンを大阪市内のあちこちに出没させる。SNSなどで話題になったところで正体を明かし、くまモンがつぶやくツイッターと、ブログ「くまモン大阪出張紀行」をスタート。
やがてくまモンは蒲島郁夫熊本県知事から「くまもとサプライズ特命全権大使」に任命され、「出張先の大阪で自分の名刺を1万枚配るように」というミッションを仰せつかる。
「小山さんのアイデアを真似て、くまモンも32種類の名刺をつくりました。名刺は1日1回しか配らないので、全部揃えたければまた後日くまモンの出没するところに行こう、となります」(成尾さん)