バトルスカーの数だけ強くなる
起業した当時はあまり意識したことはありませんでしたが、ロールモデルという存在はキャリアビルディングにとても重要な役割を果たすのではないかと思うことがあります。もしあの頃の自分にロールモデルがいたら、きっとその人がやっていないことを探し当ててもっと違う挑戦をしていたかもしれない。となると今とはまた違った選択をする自分がいたのかもしれない。そんなことを考えるわけです。
私の半生を綴った「極めるひとほどあきっぽい」でも触れていますが、ロールモデルのかわりに私は何人かのメンターに出会いました。そのひとりが数年前に他界されたデイビッド・ファナング氏というバイオベンチャー業界のCEOとして有名な人物でした。彼に出会ったのは、私が企業経営者として歩みはじめた頃で、事業を軌道にのせるプレッシャーもありましたし、チームを集めることや、そのメンバーがどうすれば自分を信じてついてきてくれるのか、悩みだらけでした。
そんな私にディビッドは「どんなに傷ついても前進し続ければ、バトルスカー(戦傷)の数だけ強いリーダーになれる」と言ってくれました。彼のこの言葉は今でも忘れません。正しい努力を続ければ必ず報われる時が来る。経験したことがないことをやっているのだから傷ついて当たり前。傷つくこと自体は恐れないにしても、傷つく時はやっぱり傷つくもの。それはそれでよしとして、傷を負いながらも前を向いてがむしゃらに走り続けて来ることができました。