「避難成功」の有珠山と御嶽山はなにが違うか

長野県・岐阜県の県境にある活火山の御嶽山が突発的な噴火を始め、死者・行方不明者は合計63名に達した。軽トラックほどの巨大な岩石が雨のように降り注ぎ、登山者が甚大な被害に遭った。噴火の発生時は、紅葉の時期を迎えた好天の土曜日の正午前で、特に人が多い日時だった。

今回の噴火は、白い水蒸気と火山灰が含まれる噴火で「水蒸気噴火」と呼ばれている。地下にあるマグマによって熱せられた地下水が水蒸気となり、勢いよく地上に噴き出し、火口周辺の岩石を瞬時に砕いて撒き散らしたのだ。しばらく活動を休んでいた活火山が最初に起こす爆発的な噴火が、この水蒸気噴火である。

実は、このタイプの噴火は、火山学的な予知がきわめて難しい。すなわち、地下に充満した水蒸気によって上昇した圧力がいつ開放されるかが、ほとんど検知不可能なのである。

一般に、噴火予知とは、地下にあるマグマの活動が高まって生じた何らかの異状を見つけることを言う。通例、噴火の前には小さな地震が発生し、その後マグマが地表近くまで達すると、地面の上下や伸縮が起きる。こうした微弱な現象を精密機械で観測するのだが、そのためには火山の周りに地震計・傾斜計・伸縮計といった機器をたくさん配置して、24時間態勢で見張っていなければならない。

今回、全くの不意打ちを受けて多数の犠牲者が出た理由は、マグマの明瞭な動きなしに水蒸気噴火が起きてしまったことにある。現代火山学の学問としての限界がここにある。

そもそも、これまで噴火予知に成功した例では、マグマの動きが顕著だった。たとえば、2000年に噴火した北海道・有珠山では、噴火の4日前から地震が発生し、地面が隆起するなど明確な前兆が見られた。このため住民約1万人の避難が完了し、1人の死者も出さずに済んだ。一方で、今回は予知がもっとも難しいタイプの噴火が、場所・時期・時間帯の点で最悪のタイミングに起きたため大惨事となった。

こうした事態に対して、予知に失敗した火山学に税金は必要だろうか、という声も聞かれる。確かに、東日本大震災を予知できなかった地震予知と同様、金がかかる割に社会の要求する成果の出せない科学観測に対する批判は強い。そこで本稿では、「科学不信」と言われる中でも、これだけは日本人全員に伝えなければならない事実について述べたい。

御嶽山噴火では不幸にして観測結果が活用できなかったが、その直後から山に入った警察・消防・自衛隊など救助隊の方々の命を守ってきたのが、噴火予知のための観測機器なのである。

現在、御嶽山を含む47個の活火山では、地下の動きが常時観測されている。「今後100年程度の中長期的な噴火の可能性」があるため、気象庁が24時間態勢で監視しているのだ。具体的には、地震計や傾斜計などで観測し、得られたデータはリアルタイムで気象庁や大学などに送られている。こうした情報を用いて、御嶽山では安全を確保しながら捜索が行われている。

日本列島にはいつ噴火してもおかしくない活火山が110個ある。そのうち24時間態勢で常時監視されているのは、半数以下の47個しかない。噴火の開始直後に災害弱者となる登山者のみならず、活火山の近隣に暮らす地域住民にとっても、我が国の火山防災は十分とは言いがたい状況なのだ。