「あなたには40万円のブレスレットが必要です」

近年、高額な商品を販売する開運商法による被害が絶えないが、これもまた、本人の悩みや現状への不満につけこむ商法である。

私も以前に、ダイレクトメールに載っている金運アップのブレスレットを購入するために、電話をかけたことがある。しかし、相手の業者はなぜかすぐには注文を受け付けない。

「このブレスレットはオーダーメイドなので、あなたの悩みを聞いてからどの商品が良いかを判断します」

そのとき私は「安定した収入がない」などとつい正直に悩みを話してしまった。

業者は「お金がたまらないのは、お困りでしょうね」と、心配する素振りで、次のような提案をしてきた。

「あなたには金運アップのブレスレットが必要です。一番のお勧めするのは、ゴールデンルチルという石をあしらったブレスレットで40万円になります」

40万円という金額に、私が「高い! ムリです」と答えるも、しばらくはこの金額を押してきた。しかし男は諦めたのか、次に「パワーストーンを変えて、5万円ではどうか」と提案してきた。一気の35万円引きである。

ずいぶん、安くできるものだと思い、もう少し様子を見ていると、「4万円でどうでしょうか!」。それでも高いというと、次に3万円、1万円になり、最終的には、8000円になった。結局、注文するだけで30分以上の時間がかかった。

こうした悪徳業者らは、悩みを金額に置き換えて考えている。

「金額(数字)」を客が抱く不満や不安の大きさをはかる尺度にしているのだ。そして、同時にこの数字が大きければ大きいほどカモ度が高いと判断する。

私に対して最初にブレスレットの値段が40万円という高い値段を提示してきたのは、アンカリング効果(最初に高い金額を言って強い印象を与え、次にそれより安い金額を提示すると購入しやすくなる)を狙ってのこともあるだろうが、そこには悩みを数値化(金額化)して、私の深刻度をはかる狙いもあったのだ。

最初から安い8000円の商品をすすめてしまっては、深刻度はわからない。

結局、値切りに値切り、8000円で購入したので悩みは深くないと思われ、その後にはあまりしつこい勧誘はされなかった。