「あなただからできるんです」に弱い
こうした詐欺の場合、相手の心にある憐憫の情を煽るために、「あなたが金を出すことで、被災者の窮状が救える」と相手に期待を寄せてくる。
この手口の古典的なタイプが街頭募金だ。
「あなたの善意が多くの人を救うことになります」という呼びかけをされて、「あなたにしかできないことだ」という眼をされると、その期待に答えたいと思い、募金箱にお金を入れてしまう人も多いのではないだろうか。
人は頼られて、悪い気はしないものだ。他人から期待されると、人はその通りの成果を出そうとする傾向がある。これを「ピグマリオン効果」(ローゼンタール効果)と呼ぶ。
教育心理学の法則のひとつで、先生が生徒に「君はできる子だ」などと期待をかけると、その生徒の学習意欲が向上し、成績や知能が伸びるなどの効果が現れるという。まさに、詐欺師らはこの効果を利用して、思い通りの方向へターゲットを誘導するのである。
ビジネスシーンでは目標やノルマを達成するために、社員のモチベーションを常に高める必要があるだろう。その時、部下のやる気を出させるために、上司が「頼むぞ! お前ならできる」と期待をかけて、前向きな気持ちを引き出させる手がある。
しかし、ただ闇雲に期待をかけてもあまり大きな効果が出ないことも多い。
というのも、期待をかけるとは、相手の気持ちを引き上げることであり、事前に相手の気持ちがマイナス状態(くぼんだ状態)になっていなければならないからだ。それゆえ、期待の効果を高めるためには、前もって叱咤するなどの厳しい言葉をかけ、気持ちをくぼませた上で、相手に期待をかける、という手順が意外に重要なのだ。