ところで、ファーストクラスのエリートたちが、バッグやポーチの中ではなく、取り出しやすいよう常にペンを身につけるというのは、単に入国書類を書くときに便利だからというわけではない。
「わたしたちCAとのささいな会話でもじつにこまめにメモを取られます。手の平に載るような小さなメモ帳や、1枚ずつになっているメモカード、または手頃な大きさの手帳をすぐに取り出せるよう、ペンと一緒に常に胸ポケットに用意されていました」
ビジネスエリートたるもの、ペンとメモはセットにして持ち歩くのが流儀。なぜなら、彼らはちょっとした思いつきや、ビジネスヒントも逃さないようにする習慣を身につけているからであり、それは例外なく、機上でも発揮されるのである。
CAとの会話、到着地のインフォメーションビデオで流れた情報、そして自身が思いついたことなど、気になることはいつでもどんなことでもメモする。
「メモカード1枚に1項目の方もいらっしゃいますし、手帳の1ページにいろいろなことをびっしりと書き留められている方も。必ずしもキレイに書き留めるのが“超一流の証し”というわけではありません。みなさんご自分のスタイルを確立されています」
ビジネスマナー上無礼とされている「名刺の裏にメモする」行為でも、彼らは臆することなく、その場で書き込んでいくという。
「それを見ているわたしたちにも不快感はまったくありません。話に耳を傾け、発言をメモして参考にしてくださるという、どんな相手でも尊重するその姿勢に感動を覚えるほどです」
本当に大切なのは、マナーの“型”ではない。型にガチガチに縛られることほど逆に余裕のない証拠なのであろう。
ファーストクラスの常連であるビジネスエリートたちは、ときにTPOに合わせて柔軟に対応し、自分の流儀をつくり上げる。
「型を知ったうえで、型を破る」。これが、超一流と呼ばれる成功者たちの共通「スタイル」なのだ。
日系、外資系航空会社の国際線キャビンアテンダント(CA)として活躍後、女性の転職・就職を支援する会社CA-STYLEを立ち上げる。人財育成コンサルタントとして、現在も全国各地で講演・研修を行う。著書に、12万部のベストセラー『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』などがある。