100分の1の出会い
【田中】「普通」という殻を打ち破るためにも、自分を普通の人間だと思っている若い方々には、チャンスがあったらこういうことをしてみたいというのを想像してみてほしいと思います。それこそ「普通」から「変人」になるくらいの気持ちで、です。そしてその変人のアイデアを周りに話してみるのです。ほとんどの人が反対するとしても、1割、いや、1%共感する人が現れるかもしれない。100人に聞けば、1人ぐらいは同じような変人がいるものです。
【窪田】その1人の賛同者をどうやって見つけるかというところも重要ですよね。私の場合もその1人の投資家と会ったから、起業から軌道にのせることができました。他の人はみんな口をそろえて、冗談じゃないと思っていた中で、たった1人が価値を見いだしてくださった。聞いて回った挙げ句に出会った100分の1ですよ。
【田中】たまたまの100分の1を掴む。1%なり1割の人を見つけるのも、自分自身の考えをいろいろな人に発信したり、聞いたりしていないとできませんよね。優秀な人は自分に自信があるのか、はたまたプライドがあるのか、自分の中だけで答えを出してしまう傾向があり、衆知を集めたりすることがあまり得意ではないように思います。そういう発信をすると自分が軽く見られてしまうとか、いわゆるエリート意識が邪魔をしているのでしょう。
これを絶対に成功させたいと思ったら、本当は50人、100人に聞いてもいいと思うのです。それを2、3人程度に聞いておしまいにしてしまう、そういう淡泊さがあるのですよね。見ていて興味深いところです。
【窪田】僕はものすごい数の人に聞く習慣がありますね。必死ですから。
【田中】必死だから、絶対成功したいと思う。だから、何人に聞いてもまだ不安なわけです。そうすると、どんどん聞いて、それが50人、100人になる。ここまでくると、ある程度聞ききったと思えるようになりますよね(笑)。実は弊社の優秀なマネージャークラスの人間でも、ときに閉じた世界で物事を判断してしまうことが見受けられます。2、3人、しかも似た志向の人間に聞く。それでは心配ですから、とにかく衆知を集めることを奨励しています。
【窪田】外にどんどんネットワークを広げるって非常に重要ですよね。いまはいろんな通信のツールもありますから。そういうものがなかった時代に比べて多くの人とコミュニケーションできる環境にもありますしね。メール1つ書いて送れば何かしら答えが返ってくるし、返ってこなかったとしても、そこで何かを失うわけではないし。その中に、光るフィードバックがあればめっけものですよね。