秀逸なノイズ対策。乗り心地に改善の余地あり

コクピットに乗り込むと、インパネ内に航続距離が表示されているのが目に飛び込む。満充電状態での後続残は188km。EVはエアコンの電力もバッテリーから取るので、エアコンを入れるとその消費分が差し引かれ、179kmとなった。JC08モードよりも走行負荷が軽い高速道路走行を含めれば、道のりにして160kmあまり先にある群馬県高崎市の充電スポットくらいまではゆうゆう辿り着けそうだと考え、首都高速道路経由で埼玉の与野インターへ向かった。

第一目的地までの距離が比較的長いことから、首都高速道路では走行車線の流れに乗って節電気味に走行した。あらためてリーフをドライブして印象的だったのは、パワートレインのノイズが極めて少ないこと。EVはもともとノイズが小さいと思われているが、実際には音の遮断対策をしっかり行わないと、モーターやインバーター(バッテリーの直流を動力用の交流に変換する装置)の音が結構な騒音となって車内に響いてくるものだ。リーフはその点、ほとんど無音に近いくらいにノイズ対策がなされており、モーターだけで走行できるフルハイブリッドカーなどと比べても、さらに静かだ。

風切音の少なさも特筆すべき項目。リーフの空気抵抗係数(Cd値)は0.28。車の前面投影面積(車を真正面から見た時の面積)が同じ場合、Cd値が小さいほうが空気抵抗が小さくなる。近年、普通の乗用車でもCd値0.24クラスのモデルが出てきているなかでは目立って優れた値ではないのだが、実は高速走行時の風切音は、このCd値だけでは決まらない。

リーフ発表当時、エンジニアは「空気抵抗の絶対値だけでなく、ボディまわりの細かい空気の乱れを徹底的に取り除くことで風切音を減らした」と語っていた。たとえばリーフのヘッドランプは縦長で、ボンネットの面から大きく張り出した形になっているが、これはドアミラー方向に風が行きにくいよう空気の流れを整えるための措置なのだという。こうした気流制御の効果は絶大で、市販車のなかでは最も風切音が小さいモデルのひとつに仕上がっていた。

車内騒音で相対的に気になったのは床下からのロードノイズだ。試乗車にはダンロップの「エナセーブEC300」というタイヤが装着されていた。燃費と運動性能の両立を目指したエコタイヤなのだが、軽量構造のためか、ロードノイズは騒音が目立ちやすいEVであることを差し引いてもあまり静かとは思えなかった。路面の荒れの吸収性も凡庸で、路面の段差や舗装の荒い場所では振動、突き上げは大きめだった。サスペンションはかなり柔らかめだが、動きがしなやかというわけではなく、路面がうねった場所では上下の揺すられ感も大きめ。このあたりの乗り心地の洗練性を高めれば、上質感が格段に向上するものと思われた。