顧客の数が増えるうちに、ひとつの現象が生まれた。それまでめったに売れなかった商品が少しずつ売れるようになったのだ。一定の頻度で売れることがわかれば、今度は在庫として準備する。取り寄せでは数日かかるが、在庫商品であればすぐに発送できる。

人気の「綿特日本一軍手600g(キナリ)」。

「リードタイムが『3日後』から『当日』に変わるだけで、その商品の売り上げは2カ月以内に5割増えます。モノタロウは『現場を支えるネットストア』を名乗っていますが、『現場』のお客様にとって、納期は何よりも重要な要素なのです」(鈴木社長)

ネット通販では価格の比較が容易なため、「最安値」に注目が集まりがちだ。だが、鈴木社長は「必ずしも最安値を狙う必要はない」と説明する。

「最安値だけを目指すと絶対に儲かりません。価格の目安は『お客様に納得してもらえるか』。安さよりも豊富な在庫で、商品が翌日届く安心感を訴えるのがわが社のやり方なんです」

もう一つの売りが、当日出荷の商品だけを集めた分厚いカタログだ。商品点数が増えるごとに種類も増え、今は16冊を発行する。ITに疎い現場向けのサービスというだけではない。

「ネットでは欲しい商品まで一直線ですが、紙のカタログでは『こんな商品もあるのか』という気付きがある。現状では注文の85%がネットで、ファクスや電話注文は15%程度です。アナログの利用が少ないように見えてもカタログで新商品を紹介すると、ネットではそのカテゴリごと売り上げが伸びます」(鈴木社長)

モノタロウには営業マンはいない。では新しい商品をどう売り込めばいいのか。カタログは“リアル”の陣頭に立っているように思えた。

(文中敬称略)

MonotaRO(モノタロウ)
●備品や消耗品などの「間接資材」に強みを持つ
●120万社が登録。売上高は345億円
●取扱点数は約700万点。約12万点は「当日出荷」
(森本真哉=撮影)
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