いまやネット通販で買えないものはない。「これは無理だろう」と言われてきた商材すら呑み込みつつある。とりわけ、勢いに乗る「勝ち組」のビジネスモデルには、「リアル」との連携という共通点があった──。

「安く早く届ける」で118万社が愛用中

モノタロウの鈴木雅哉社長/1975年生まれ。98年立教大学社会学部卒業後、住友商事入社。2000年モノタロウに出向。06年楽天をへて、07年に再入社。12年より現職。

桃太郎ではなく「MonotaRO(モノタロウ)」。その奇妙な社名の、強調された大文字には意味があった。「MRO」とはメンテナンス、リペアー&オペレーションの略で、製品の原材料にあたる直接資材に対し、備品や消耗品などの間接資材を表す。

間接資材は直接資材より経費としての金額は少ない割に品目数が多く、商品分類ごとに仕入れ先も異なるため、購入には手間がかかる。また、大量にまとめ買いをする大企業には安く、小口購入の中小企業には相対的に高く売られてきた。しかも中小企業向けは納品も後回しで日数がかかる――。モノタロウはここに目をつけた。価格は発注規模に関係なくワンプライス。ネットやファクスで簡単に注文ができ、ねじ1本からいち早く届ける。

サイトのトップページには、「ねじ・ボルト・釘・ビス」「梱包・テープ・物流・清掃用品」「科学研究・開発用品」などのカテゴリが並び、1個3円のばね座金から、800万円を超える磁場発生装置までが並ぶ。取扱点数は約700万点。このうち約12万点が「当日出荷」に対応する在庫商品だ。製造業を中心に顧客の登録口座数は120万件を数え、2013年の売上高は345億円(連結)。今期は426億円とする計画だ。人はモノタロウをこう呼ぶ。「間接資材のアマゾン」。世界最大手のアマゾンと同じく、大型化・効率化で躍進してきたからだ。

兵庫県尼崎市。巨大な物流センターを隣に構える本社で、鈴木雅哉社長は「最初からこのビジネスモデルを目指していたわけではない」と振り返った。

「創業時の計画は大企業向けの購買システムでした。発注のデジタル化さえすればいいと考えていた。でも事業を始めてみると、我々の商品は競合に対して、価格は高く、発注から納品までの『リードタイム』も長い。試行錯誤のなかで、大企業よりも中小企業に通販のニーズがあることがわかってきました。軍手や電球といった定番商品でも、『安く早く届ける』を徹底できれば、大きなニーズがあった」