いまやネット通販で買えないものはない。「これは無理だろう」と言われてきた商材すら呑み込みつつある。とりわけ、勢いに乗る「勝ち組」のビジネスモデルには、「リアル」との連携という共通点があった──。
「躓き」で気づいたネット商売の本質
パソコンのディスプレーに映る、洋服を着たモデルの画像。その横にある「店舗取寄」のボタンを押すと、店舗一覧の画面が立ち上がり、そこから希望店舗と来店予定日を指定する――。セレクトショップの国内大手ユナイテッドアローズ(以下、UA)は、今春からオンライン上で販売する商品を一部の店舗に取り寄せて試着できるサービスのテスト運用を始めた。
UAのネット通販は毎年業績を伸ばし続け、2013年3月期の売上高が119億円。全売上高の実に11.2%がネット通販となっている。ファッション業界では異例の比率だ。成功の背景には「実店舗とネット通販の融合」という考え方がある。
UAが2006年に自社の直営サイトを立ち上げたときには、「実店舗とネットは分ける」という方針だった。実店舗にある商品は少なく、ネット独自の商品を揃えたが、売り上げは伸びず、2008年にサービスは終了する。
このため09年に立ち上げた自社サイト「UAオンラインストア」では「実店舗の商品が買える」という方針に変えられた。さらに実店舗とネット通販で共通のポイントが貯まる「会員カード」を発行することで、一人ひとりの顧客の動きが見えるようになった。この結果、明らかになったのは、「ネットは実店舗の売り上げを減らす存在ではない。むしろ売り上げを伸ばすもの」ということだ。デジタルマーケティング部の相川慎太郎部長は分析する。
「実店舗とネット通販を併用しているお客様は、実店舗だけで購入する人よりも店頭での平均購入金額が高く、約2.5倍になります。ネットでUAと接触する機会が増えれば、お客様は店頭にも足を運ぶ。つまりネット通販の促進が、店舗での売り上げにつながるのです。もうネット通販と実店舗で売り上げを奪い合う時代ではありません」