「あの人、遅くまで頑張るな」ではダメ

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ご存じの通り1990年代の終わりから2000年代のはじめにかけて日本企業では成果主義が導入されましたがうまく機能せず、見直しの方向に進んでいます。

そうなるのは成果主義が機能する業務や職種が限られているからです。セールスマンのように個人の成果が数字で測れる仕事ならよいのですが、多くの場合、仕事はチームで行われますし、成果を明確に測れない業務も少なくない。なんでもかんでも成果主義、というわけにはいかないでしょう。

しかし、労働時間で給料を決めることを続ける限り、長時間労働はなくならないと思います。典型的なのは昼間だらだらとしていて、定時が過ぎてから働くような人。なぜ残業しているかというと、割増賃金が支払われるからです。

そうではなく、目指すべきは効率的に働くと労働者が得をするようなやり方です。たとえば、これまでの働き方と実績をベースに「こういう成果を出すことを前提にこの給料を支払います」と決める。そうなれば効率的に仕事をして、残業せずに帰宅しても、従来と変わらない水準の給料が得られます。大切なのは効率的に働くインセンティブをつくることです。

そのためには、働く人の意識を変えることも必要になるでしょう。

「あの人、いつも遅くまで頑張っているな」ではなく、「あの人、毎日仕事をビシッと片付け定時に帰って格好いいな」という価値観を根づかせていく必要があります。

私がフランスのOECDで働いていたときは夜、1人で職場に残って仕事をしていると、警備員から「おまえ、まだいたのか」と心配そうに声をかけられました。「家庭がうまくいっていないんじゃないか」と思われるのです。

フランスはまだのんびりしたところがあるのですが、それでもみんな家庭が大事なので昼休み中も一生懸命仕事をして早く帰宅し、家族と一緒に食事をとっていました。休暇に関しても同様で、ちゃんと取らないと「大丈夫か」と心配されます。

そうした環境のなかで仕事をしていればみんな早く帰るし、休暇もきちんととります。しかし日本の現状は逆。これもなんとか変えていかなければなりません。

(構成=宮内 健 PIXTA=写真)
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