「あれをしたらダメ」「これもダメ」各社で行われているパワハラ研修はダメ出しばかり……。では、いま上司はどう叱ったらいいのか?
叱られたいと思う部下の心の内
管理職として自信がないのか、いつも不安げな“オドオド女性上司”――。しかし、部下が何度かトラブルを起こしたりすると、いままで我慢してきた反動なのか、感情を一気に爆発させてしまう。相手の権利や人格を尊重したうえで、自分の意見を誠実かつ率直に伝えるコミュニケーションスキルの普及を通して、数多くの女性上司の悩みに耳を傾けてきたアサーティブジャパン代表理事の森田汐生さんは、「きっと、いいたくてもいえなかったことが堰を切るかのように出てしまうのでしょう。つい感情的になって一方的になる女性上司が意外と多いですね」という。
そうした女性上司の傾向の一つとして、感情的になればなるほど、次第にお説教を始めてしまう。そうなると最初に叱っていたことは脇に放られ、過去に不満に思っていた出来事などを引っ張り出してきて、そのことを叱り出すのだ。さらにエスカレートして「そもそもあなたの性格が……」などと人格攻撃に移った途端、パワハラの信号が“赤”に変わる。ここで森田さんがアドバイスをくれた。
「すでに終わった過去のことを持ち出して叱っても何の効果もありません。いうべきは現在と未来のことについて。また、お説教ではなく、本当に大事なことに的を絞ってシンプルに叱るようにしてください。叱るときは『1回・ワンテーマ』が鉄則です。人を叱るのではなく、あくまでも人の行為を叱るということも覚えておきましょう。そうすればパワハラにはなりません」
それにしても一昔前の上司は叱り方がうまかった。仕事中に厳しく叱っても、仕事帰りに「ちょっと一杯やっていくか」と叱った本人を誘い、「君には期待しているよ。だから時には厳しいことをいうんだ。これにめげずに頑張ってな」とフォローができていた。しかし、いまや「個」の時代で、アフター・ファイブで飲みに誘っても部下はなかなかついてこない。伝家の宝刀だった“飲みニケーション”だが、いまでは抜きにくい時代になっている。