翻ってみて、部下は叱られることを嫌がっているのだろうか。森田さんは「そんなことはありません。心のなかでは叱ってほしい、もっと自分とかかわってほしいと思っています」という。そういわれても、自信がないオドオド女性上司は、「本当かな」とすぐには信じられないだろう。しかし、森田さんの意見を裏付けるデータがある。それが別掲のデータだ。
これは人事総合ソリューション企業のレジェンダ・コーポレーションが入社3年目までの若手社員を対象に、叱られることに関して行った意識調査の結果。上司や先輩に叱られたことが「よくある」「時々ある」の回答が合わせて49.6%を占める。そして興味深いのが、「正当な理由があれば、叱られたいか」という問いに対して、「とても思う」「やや思う」の回答が合わせて78.5%も占めている点だ。その理由として「叱られなければ、伸びないと思うから」「間違いは正してほしい」という声があがっているそうだ。
もっとも、「叱り方が下手な人に叱られると、仕事どころではなくなる」という手厳しい意見もある。叱るのでも、部下がきちんと耳を傾けてくれる叱り方でなくてはいけない。だとすると、どのように叱ったらよいのか。感情的でもなく、回りくどい叱り方でもなく、部下の心にまっすぐ届く叱り方について、森田さんは次のようにいう。
「まず、叱られるような行動をした結果、いま組織内にどのようなデメリットが発生しているかを客観的に伝えましょう。行動だけを指摘しても、部下にはことの重要性がわかりません。そして、部下の気持ちを代弁して伝えてあげることです。たとえば『あなたがお客さまのことを思ってしたことはわかっているよ』と伝えれば、自分のことを理解しているのだとわかり、上司の声に耳を傾けてくれます。最後のポイントが、上司としてどのような変化を望んでいるのか、具体的な提案を行うことです」
女性上司の場合、部下から嫌われるのを恐れて、叱る場面でも優しくいってしまうことが少なくない。しかし、それでは叱っている効果が薄れてしまう。この点について森田さんは「威厳を持ってとはよくいわれますが、すぐに威厳を身に付けられるわけではありません。しかし、女性上司のみなさんも、もう少し自分に自信を持って、いうべきことはきっぱりいうという姿勢が必要でしょう」とアドバイスする。
いま各企業で行われている管理職のパワハラ研修のほとんどは、「あれもするな」「これもするな」の“ダメ出し”のオンパレードだという。だからといって萎縮して、叱ることをためらってはいけない。部下を育てるためには叱ることも必要なのだ。今回登場していただいた3人の“叱り方上手”から教わったことを頭のなかに叩き込んで、部下と真正面から相対してほしい。