市街地、郊外一般道での乗り心地

プッシュ式スタートスイッチを押してエンジンを起動させる。昔のディーゼルに比べると騒音、振動はきわめて小さいが、ガソリン車に比べるとノイジーなのも確かで、とくにアイドリングや低速走行時には「カラカラカラ」というディーゼル車特有の音がわりと素直に室内に侵入してくる。また、320dには信号待ちなどのときにエンジンを自動的に停止させて燃料を節約するエンジンオートスタートストップ機能(日本でいうところのアイドリングストップ機構)が装備されているが、停止したエンジンが再起動するときの横揺れは大きめ。ナイーブなユーザーにとっては気になるかもしれない。

一方で、走りの味付けは見事なものだった。184馬力というパワーは今日のプレミアムセグメントモデルとしては特段強力というわけではないのだが、回転上がりの良さは2リットル級ディーゼルエンジンとしては群を抜いていた。また8速ATの変速レスポンスもきわめて良好で、この両者の組み合わせによって1.5トン台半ばのボディを羽根のように軽々と加速させるような独特のフィーリングを演出している。

また、3500rpm以上から上限の5400rpmのゾーンでは、一般的な直噴クリーンディーゼルの“モワーン”という鈍い音ともガソリン車の金属的な音とも異なる、擬声語で表現すれば“クイィィーン”という独特なサウンドを立てる。「ディーゼルでも速い」ではなく、ディーゼルならではの爽快感の演出への開発陣のこだわりが垣間見えた。

乗り心地は、走りを徹底優先させたスポーツサスペンションを装備しているにもかかわらず良い。サスペンションのバネレート、ショックアブゾーバーの減衰力ともに、一般的な高級車に比べて相当高く設定されており、実際に走ってもロールの少なさからそのことを感じ取れるのだが、舗装の荒れた部分や道路の継ぎ目などを通過してもガチンという尖った衝撃が室内に伝わってくることはなく、終始滑らかな走り味であった。