店選びの基準は「いいね」が集まるか

もう一つの傾向は「イベント化」です。アルコールという「モノ」から、仲間と飲むという「コト」に関心が移っていることから、「コト消費」ともいわれます。酒離れによって、飲酒は特別なことに変わりました。定期的に飲酒する機会は減っているのですが、その代わり、飲むことは不定期に「非日常」を演出してくれるイベントに変わっています。

たとえばビール全体の消費は減っていますが、若者の間でも、価格が高いプレミアムビールは消費が伸びています。いつも飲むなら手頃な発泡酒を選びますが、たまに飲むなら贅沢をしたい、と考えているようです。

また、この数年、全国ではラーメンやご当地グルメといった「食」をテーマにしたイベントが人気を集めていますが、このうちドイツビールをテーマにした「オクトーバーフェスト」にも大勢の若者が参加しています。お台場や駒沢公園、横浜港などに数十万人が押し寄せ、一杯1000円程度のドイツビールを楽しそうに飲んでいます。私の身近にも、「飲み会には絶対に参加しません」と宣言していた大学生がいましたが、あるときフェイスブックに「オクトーバーフェストに来ています!」と写真を載せているのをみて、仰天しました。

ソーシャルメディアを意識して生活しているというのも、「さとり世代」の特徴でしょう。友人と連れだって遊びに行くときには、「このネタはどれだけ『いいね』を集められるか」が、大きな動機になります。たとえば「かわいいカフェで話題のパンケーキを食べている」は自慢できますが、「居酒屋でビールを飲んでいる」ではネタになりません。

これまで居酒屋は、手頃な価格で日常的に飲める場所として人気がありました。しかし、飲酒習慣のない若者にとっては、縁遠い場所になってしまった。これは若者の数が絶対的に少ないことを考えれば、仕方がないことす。2013年の新成人は約122万人。

「団塊世代」(1970年)の約246万人、「バブル世代」(1994年)の207万人に比べれば、圧倒的に少ない。企業としては、将来の投資として若者向けのマーケティングが重要なことは理解しつつも、より人数の多い団塊世代やバブル世代に向けた施策を優先させてしまうのです。