大人たちは「重要な脇役」

もうひとつ、記者から企画者である僕たちに向けてこんな質問がありました。「高校生が商店街に協力するプログラムや、高校生がまちおこしに携わるインターンシップなど、世の中ではこれまでにも女子高生が地域や行政に関わる様々な取り組みが実践されているが、こうした従来の取り組みと今回のJK課はどう違うのか」というものです。これにはとても重要な議論が含まれていると思います。

はっきり言って、まったく違います。これまでは、大人たちが用意したプログラムに高校生たちを「参加させる」、というものがほとんどでした。JK課は、女子高生メンバーが主役です。何をやりたいのか、何をやるべきなのか。そして、なぜやるのか。全て彼女たち自身で考え、決めていきます。大人たちはその「実現性を高める」ためのサポーターに過ぎず、女子高生主役のプロジェクトにおける、「重要な脇役」です。

もちろん、想定外のエラーやトラブルが色々と発生するリスクもありますが、それでも挑戦しようとした鯖江市の「決断」が新しいのです。市役所には今でも、「結局、JK課で彼女たちに何を“やらせる”のですか」という質問が寄せられるようですが、その質問自体がナンセンスです。

女子高生たちが本当に主役になるということで、もしかするとこれは、大人たちの「思考の枠」を超えることができる取り組みになるかもしれません。JK課のアドバイザーでもある地元福井大学の竹本拓治准教授は会見で、「例えば大人と若者を交えたビジネスプランコンテストを実施すると、若者が提案するプランは新規性があっても実現性が乏しい。一方、大人が提案するプランは実現性が高くても新規性に乏しいというありきたりなギャップが生まれる。そして、どうしても大人の目線で実現性ばかりが評価・重視され、なかなか新しいものは生まれない。これが大人の思考の枠の限界である」と補足してくださいました。

どちらか一方というトレードオフではなく、その枠組みを超えてコラボレーションしようというチャレンジが、今回のJK課の取り組みの本質なのです。女子高生たちを主役として徹底的にリスペクトし、大人たちは「重要な脇役」をまっとうすることで、地域本来のポテンシャルが引き出されていくのだと考えています。

市役所が女子高生の実行部隊となるわけです。市役所や大人が女子高生を“使う”のではなく、女子高生が市役所や大人を“使う”。このダイナミックな関係性の転換から、まちや大人たちが共に学び、変化し、「新しい何か」が生まれてくるはずです。

しかし、「新しい何か」だけに、多くの人にとってはそれを具体的にイメージすることが難しく、なんだか「怪しい」という評判もつきまといます。この「怪しさ」を乗り越え、地域の女子高生たちはいかにしてこの実験的プロジェクトにコミットしていったのか、それは次回お話しできればと思います。

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