“ゆるい市民”がまちを変えていく

記者がこんな質問をしました。

「悩みからサービスが生まれることに気づいたということですが、みなさんは鯖江で暮らしていて、何か悩みはありますか」

記者からの質問に答えるJK課メンバー

これに対して、ある女子高生が「朝の通学で利用している市営バスが、始業2分前に学校に着くので、教室に入るのがいつもギリギリです」とポロリと口にしました。これには同席していた牧野百男市長が驚いたようで、「えっ? いつから? もっと早く教えてよ」とサービスの改善を約束していました。これは何年も前からのことのようで、思わぬところで公共サービスの問題点が発覚したわけですが、このやり取りで会見会場は大いに湧きました。

女子高生たちにはこれまで、自分たちが困っていることや、改善して欲しいと思うことがあっても、問題提起する機会などありませんでした。というよりも、悩みを発信することが問題や課題の改善につながる、という発想などなかったのだと思います。大人がつくったサービスに問題があっても、ブツブツと不満を言って耐えるだけ。バス時刻のことは、市にとってすぐに解決できるような問題だったようです。にも関わらず、市営バスのヘビーユーザーである女子高生にとってなんとも不便な状態が、何年もの間放置されていた。「利用者の声を聞く」という、ものすごく単純であたりまえのことがうまくいってなかったわけです。

今回のJK課プロジェクトは、女子高生たちに悩みや疑問・要望を自由に口にしてもらい、問題提起の機会を“委ねる”試みです。そしてそれに、大人たちが「素直に耳を傾ける」ということが何より重要です。悩みは人それぞれ違うし、解決方法も色々考えられます。そして、そのヒントは意外なところにあったりする。大人も子ども関係なく、プロも素人も関係なく、それらをゆるゆると話し合いながら、小さなことからでも形にしていくことが大切です。

もし僕が会見で答える立場だったなら、暮らしの悩みは何かと聞かれて、おそらく「地域の人間関係が希薄だ」とか、「若者が職業選択の可能性を感じられない」とか、そんな大げさでもっともらしいことを偉そうに言っているでしょう。だからダメなんです。悩みや課題の大小よりも、日常に潜む「ズレ」が問題なのだと思います。

普段、行政や公共政策に最も遠い存在である女子高生たちだからこそ、悩みや違和感を気取らずさくっと口に出すことができる。そして、それに対して、地域や大人がしっかり反応する。そんなやりとりの積み重ねが、まち全体にどんどん広がっていくことが理想です。まずは、女子高生たちがその突破口の役割を果たしてくれる、つまり“ゆるい市民”からまちが変わっていくのだと信じています。