今、大学生が一番働きたい会社はどこなのだろうか。いくつかの主要有名企業の10年の推移とともに、今年の傾向を追う。
昨年と今年で、志向ががらりと変化
今年のランキングの上位を見ると、昨年とかなり色合いが違うことに気づく。業績好調だった総合商社や銀行といった手堅い企業の躍進が目立った昨年と比べ、今年は1位にJTBグループ、2位がオリエンタルランド、3位がANA、4位以下10位まで見ても、JAL、JR東日本、H.I.S.といったサービス業に人気が集中した。
「朝日学情ナビ」の乾真一朗氏が「今年は明らかに就職氷河期からは抜けた、といえる状況です」というように、各企業とも採用予定数は上昇傾向にある。そんな景気の浮揚感からなのか、旅行や運輸、レジャー施設といった、大学生にとって身近な会社が上位に多くランクインしている。
またそれに連動してか、前年度に見られた学生の「中堅・中小企業志向」が「大企業志向」に戻りつつある。ランキングで著名な大企業に票が集まりがちなのは、調査対象が、就活のとば口に立ったばかりの大学3年生および大学院1年生であることも影響しているだろう。就活の現実に直面する4~5カ月後に調査をしたら、また別の結果になるかもしれないが、総じて今年の学生は、就職に対して楽観的になってきているということはいえるだろう。
さて、このランキングがこの10年でどう推移したか、主要職種の中から代表的な企業を例に検証してみよう。
図は主要業界の人気企業7社の2006年から今年までのランキングの推移を表したものである。
ここ数年、高い人気を保っているJTBグループとANAが、08年に一度、順位を落としている。これは、リーマン・ショックの影響だろう。景気が落ちこめば、旅行需要もガタ落ちし、業界の未来は暗いと思ったのだろうか。ANAの13年の落ち込みは、11年末から12年にかけて、鳴り物入りで就航したボーイング787のトラブル続出が影響したと考えられる。
三菱東京UFJ銀行、伊藤忠商事はいずれも昨年に比べ今年は順位が下がったが、最近は業界の雄として安定した人気を誇っている。10年間、ほぼトップ10入りを果たしているのは、この2社とJTBグループくらいだ。