20代の江本さんは「50代で一応役付きだが、仕事がなく、ボーッとしている人がいます。高い給料を払う価値があるとはとても思えません」と憤懣やるかたない。40代の渡辺さんも「50代は、部下に仕事を振れた世代なので、下の世代の苦労を知りません。若手の尻を叩くくせに、自分たちは守りに入っているので失望してしまいます」とぶちまける。
また、40代の竹内さんは「50代が第一線だった時代は、販売代理店回りだけで数字が取れた。しかし、いまでは無理な話。それで、売り上げをあげろと、机の前でふんぞり返っていわれても、『だったら自分でやってみせてよ』と反感を覚えるだけです」と胸の内を明かす。
いまや“50代不良資産説”まで出る有り様だ。50代には心外かもしれないが、苦境にあえぐ部下や後輩を尻目に、企業で最も責任の重い50代が逃げ切りを図るのは許せない心情なのだろう。
これまでの検証によって企業組織における大きな問題点が一つ浮かび上がっている。それは30代を見ていくなかで明らかになった、世代間のノウハウのバトンタッチが滞っているという問題である。
40代の余剰のマンパワーを活用して30代の負担軽減を図ったり、もともと人材の層が薄かった30代で積極的に中途採用を行うなど、企業によって対応法は違ってくるだろうが、世代間の“血脈”を太くできるかどうかで、企業の永続性は大きな影響を受ける。その意味で企業は、ラインの継承という観点からも、年代別の人事・組織や世代間のコミュニケーション、人材育成のあり方を再検討すべき時期にきているのだろう。