逆に中途採用で30代を補充しているということは、転職する30代も多いということ。就職氷河期で、新卒のときには志望どおりの企業に入れなかった彼ら。リベンジを果たすべく、転職でステップアップを狙う人も多いようだ。

製薬会社に勤める30代女性の横尾綾さん(仮名)は同業他社からの転職組。前職では営業を担当、成績はトップだったという。「先輩社員から手取り足取り教えてもらったということはほとんどありません。先輩には自分で聞いて、自分で経験を積んで、ノウハウを身につけてきました。そもそもいまの時代、終身雇用はありえませんよね。自分の道は自分で切り開くべきではないでしょうか」といたってクールだ。

企業にとっては戦力として期待している30代だが、きっかけがあれば、ためらうことなく転職を選択する。人材流出を防ぐためには、彼らの不満を解消し、モチベーションを維持する一層の努力が、企業サイドには求められるだろう。

就職氷河期で人数が少ない30代と違って20代、特に20代後半は、新卒大量採用がいったん復活した時期に入社した。いまでは仕事も一通りこなせるようになり、大きな仕事や後輩の指導なども任されるようになっている。

前出の政府系金融機関に勤める江本さんは「全社的に人数が少ないので、20代でも責任ある仕事を担当させてもらえます。自分は本当に恵まれた職場にいるなと感じています」という。

同じく20代後半でメガバンク勤務の桜井さんは都内支店の営業職として大手企業を担当し、取り扱う預金高は100億円に上る。

「預金、貸金、利息など、さまざまな項目でノルマが課せられています。新しい金融商品もどんどん開発され、それを顧客に提案しなければなりません。銀行の仕事はとにかく事務手続きが多く、仕事量も増えています」と桜井さん。

20代を取り巻く環境が厳しくなっているという指摘もある。鉄鋼メーカーの人事部にいる渡辺さんは、「30代の人手不足を補うために、20代が難しい仕事を手伝わされています。ところが、30代は多忙で十分なフォローができず、右往左往している20代が少なくありません。自分たちが20代だったときと比べると、健気にがんばっていると思いますよ」と見ている。同社の社内アンケートによると、20代は「仕事の量に加え、仕事の質を維持する負担も重い」と感じているそうだ。